第8話 胡散臭い少女魔王
たのもぅッ!
少女が幼さが残る可愛らしい声で言い放ち、アルバートに案内された屋敷の扉を開け放った。
そうして、奥から様々な魔物が現れると、少女を見て、その後に苦笑いを浮かべているアルバートに目を向けていた。
「お、おう、え〜っと――」
頭を掻き、困惑しながらヘラヘラと表情を緩めている獣――スーツを着た、モフモフしている魔物が少女を指差し、アルバートに尋ねた。
「あ〜……アルの旦那?また拾ってきたのかい?いや、悪いとは言わねぇが、どうせまた――」
少女はリコダカリバーから光る刀身を発現させ、頻りに手をこまねいた。
「え?何それ?え、どういうこと?」
「いや、こちらの魔王殿がな」
「は?魔王?」
「ああ、自分は魔王だ。と、教えてくれた。そして、どの勢力よりも大きな災厄を引き起こすのだ。と、――」
「なぜぇッ!」
獣の男だけではなく、その場にいる魔物たちがチラチラと少女を見ては首を傾げ、アルバートを訝しんでいた。
その際、少女は胸を張ることとしたり顔を浮かべるのを止めない。
「いやいやアルの旦那、気でも触れちまったか?この子は人間で、どう見たって変な人間の部類だろう――」
変な人間――少女は獣に向かって光線を発射。そして、10、20の光線を獣の周囲に舞わせると、ニコリ。と、満面の笑みを浮かべながら、首を切るようなジェスチャーをした。
「魔王殿がお怒りであるぞ?その光を躱すことが出来るのなら、まだ言うと良い……ただ、某の見立てでは、あと数十倍はその光線が増えるぞ?」
「……OK。実力はここにいる誰よりもヤバイってことは理解出来た。だが、いきなり、しかも人間が魔王になるなんて」
「魔王殿が魔王だと名乗ったのだ、それ以外はあるまい。それに現状、人間だろうが魔物だろうが、誰が魔王になったところで、大した問題でもないだろう」
「いや大問題だろッ!それに戦う相手は人間もいるんだぜ?その嬢ちゃんに人間が殺せるか?」
「ここに来る間、向かって来る人間魔物、両方を10近く串刺しにしていたぞ」
「こんなちっこい女の子が――」
少女は獣の尻に光線の先を何度も当て、チクチクと連続で攻撃し始めた。
「痛いたい痛い――」
「……魔王殿は小さくはない。立派なレディだ」
少女は台に乗って手を伸ばし、崩れないようにアルバートの頭を撫でた。
「と、いうわけだ。とりあえず、魔王殿は記憶をなくしているらしい故に、色々と教えてやってくれ」
「は?記憶って――」
「良いか?魔王殿は記憶をなくしている。だ」
アルバートが獣の顔にずい。と、近づき、どこか困ったように一度首を振り、その後で笑みを浮かべた。
きっと、彼なりの配慮なのだろう。納得いかないかもしれないが、ここは任せろ。などの意味があるに違いない。と、少女は予想し、訝しがる魔物の面々に咲いたような笑みを向けたのである。
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