第肆話
しんと静まり返った部屋の中で、俺は顔を背けながら、静かに目を閉じて横たわっているヤツにちらりと視線を向ける。
さらりとした黒髪、すっと通った鼻筋、中性的で、目を閉じていてもわかるほどに気の強そうな顔立ち。伊月さんとはまた違った感じの美形だと俺は思う。歳は十三から十五ぐらいだろうか。きちんと確かめた訳ではないが、俺より小柄だったような気がするため、多分年下だろう。それに今まで、俺と同じもしくは年上で、俺より背の低いヤツに出会ったことがないからそう思いたいってのもあるんだとも思った。
「ホントに、コイツがあの化け物を仕留めたんだよな……」
成人すら迎えていないようなヤツが、自分より何倍も大きい敵を倒したという事実は、俺の脳裏に深くしっかりと刻み込まれると同時に、俺の心に強い衝撃を与えた。
此処に来てからずっと思い出さないように、心の奥底で厳重に鍵を掛けてしまい込んでいた、あの
もし、俺があの時コイツほど強かったら、
俺は此処に来て変わった、あの頃のような弱い自分ではないのだ。しかし、時々そう思うことに疑問を感じる。
「俺、ちゃんと強くなれてる……よな?」
ふー、と息を
「あーっ、やっぱ静かなとこど一人になんのダメだなー。嫌なこと思いだしちまう……。──っつーか、何で俺一人だけでコイツのこと見張らなきゃいけねぇんだよ!!アニキは報告しに行ったっきりだし、優のヤツはがんばれー、とかなんとか言ってさっさと部屋に帰っちまうし……!!」
落ち込んだ気分を無理矢理上げようと不満を言ってみる。くそ、優のあの顔思い出したらなんか腹立ってきた。何ががんばれーだ!お前なんもしてねぇんだから、ちょっと位は手伝えよ!!
一通り
ちらっと再び視線を向けると、そこにはやはりすやすやと──って言っていいのか分からないが──眠っている。俺はそれを見て、もう一度息を吐きだしてからぽつりと呟いた。
「こんだけ寝てるし、大丈夫だろ。うん」
その後、しばらくして、コイツの目が覚めたら報告しに来いっていう伊月さんの言葉と一緒に、優のヤロウも見張りとして引きずられてきた。ざまぁみろ。自分だけ部屋でぐーすか寝ようとするからだ。
そうして俺たちは交代で見張りをし、軽口をたたき合いながら夜を明かした。
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