第2話 Awakening

 六畳間の部屋の中央あたりで、デスクチェアに座って足をブラブラしているパツキンロリがいる。彼女は黄金の瞳で液晶画面を見つめ、すでに輝いているそれを煌めかせている。


「なあなあトオルー、かくせいざいってなんだー?」


 画面を注視したまま、素朴な疑問を壁に反射させて投げかけてくるゴールデンロリ。文字通りロリとしてもゴールデンだ。


 彼女の名はリュツィ。一人暮らしの俺のところに転がり込んできた、というかインベイドしてきた、ちょっと変わりものの女の子である。身長は約140センチ。俺とは30センチ以上見ている世界が違うちんまいちんまいフラクスンだ。そしてそのローリンに付随してもう一人インベイドしてきたのが、


「覚醒剤と言うからには服用したものを起こさせるものなのでは……? それか眠っている能力を目覚めさせるものかもしれませんね」


 この、ちょっとズレているプラチナブロンドのアリスさんである。銀髪に見える不思議ちゃんの国の住人である彼女は、厨二病的発言をしながら至って真面目である。だがそれがいい。


 俺は誤解が加速して、ランボルギーニになる前に訂正することにした。


「覚醒剤っていうのは麻薬のことだ。……そうだな、簡単に言うと毒だ、毒。使うと間違いなく心身ともに害を及ぼす。使い続ければ最悪死ぬこともある」


 と説明してやると、アリスは「ふむ、毒物でしたか。覚醒剤と銘打っておきながら毒物とは……。なるほどなあ……」と一人納得し、リュツィは逆に納得がいかない顔をした。


「なんで毒なのにこの人は覚醒剤を使うんだ? 私にはわけがわからないぞ。なんでだ?」


 疑問符を二つ飛ばして俺の顔面に激突させるリュツィ。俺は二回のけぞってから、


「覚醒剤を使うとな、気持ちよくなるんだよ。まあいろいろ種類があるが、大体のものがそうだ。まるで自分が万能の神にでもなったかのように、気持ちがハイになる、つまり昂るんだな」


 となるたけわかりやすく解説してやった。するとリュツィは少し考える素振りを見せて、


「ふーむ……。そうか……。つまり、そういう毒物なわけだな! 覚醒剤は!」


 と理解したようだった。俺は理解の早さに感心してうなずき、


「そうだ。要するに覚醒剤は絶対に使っちゃいけないもの、ってわけだ。わかったか? わかったなら迷わずにはいと言え」


 と了解を促した。そうするとリュツィは、片手をシュビっと上げて口を開き、


「はい!」


 と元気よく返事をした。


 お父さんは一安心です。はい。

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