第26話 こんな毎日

あー眠い。お昼を食べてからの授業は特に眠い。今日は天気もよくて暖かいからすぐに睡魔が襲ってくる・・・。ハッ!?今眠ってた?


先生の話が子守唄のように聞こえるわ。これは催眠魔法か?ん?生徒同士でなんか揉め始めたぞ。まぁどうでもいいか。この隙にちょっと眠ってしまおう・・・


カランカラーン!カランカラーン!

ハッ!?やばっ!授業終了の鐘か!20分は眠っていたか?なんか騒がしいな。あれ?まだ揉めてるのか?珍しいな。


「ヤージャン様。あれはどうしたんですか?一体」


隣の席の貴族ヤージャン様に聞いてみる。


「キミねぇ。よくこの状況で寝ていられたな。二人はただ言い合いをしてるだけだ、少し熱くなりすぎて引き際を失ったようだけどね」


さすがはヤージャン様。冷静でいらっしゃる。周りの生徒はなるべく関わらないように、しかし仲裁の機会をそれとく窺っているようだ。先生も慣れたものなのか、放置している様子。


「原因はどういったことなのでしょうか?」


「税収を上げる方法で意見が対立した。それだけさ」


「お教えいただき、ありがとうございます」


ヤージャン様はつまらなそうな顔をして視線を教科書に戻した。売り言葉に買い言葉ってわけか。そろそろ誰か止めてやれよ。取り返しつかなくなるぞ?


まあ先生が放置しているんだから、皆も大丈夫だと判断しているんだろうな。もちろん俺が介入する余地はゼロ。わざわざ死地に飛び込むわけがない。さて次の授業はなんだっけかな。



カランカラーン!カランカラーン!

今日の授業がやっと終了。あー眠い。まだ眠い。これからどうしようか。図書館行こうか、それとも一旦部屋に戻って仮眠をとるか?よし、とりあえず荷物を置きに部屋に戻るか。


「まだ言うか!」


なんだ?なんだ?


「当然だ。白を白と言っているだけだ。貴方には理解できないようで残念だよ」


あの二人また始めるのか?熱いなー。


「僕を侮辱しているのか!」


軽めの挑発を受けた一人が青い顔して叫ぶと、もう一人は目を大きく見開く。両人とも心なしか顔色が悪くなったように見える。


そりゃそうだ。返答次第では決闘になるパターンだよね。この場にいるのは得策ではないな。お貴族様の揉め事はお貴族様同士でお願いします。決闘でも何でも好きにやって下さいな。俺は後ろのドアからこそっと教室を出る。いち抜けたー。


はぁー外はいい天気だな。公園に行って散歩しようかな?うん。そうしよう。荷物を置いてからすぐに外出。日差しが気持ちいいね。あんな教室のなかでは得られないこの気分。開放感とはまさにこれのことだわ。


「ドラゴラ様。こんにちは。いい天気ですね」


「キーンか。よくきたな。一局どうだ?」


相変わらず無表情なドラゴラ様。立派なお貴族様の標準スキルってやつですね?


「ぜひ」


真似れるところは真似していこう。同じくハイ!無表情!からのギャプロ開始!


「あ、そうか。その手順を先にいれておけばよかったんですね」


「そうだな。ちょっと我慢が足りなかったな」


「はい。攻められるのではと、焦ってしまいました」


「学校はどうだね?楽しいかね?」


「はい。今日は眠くて少し眠ってしまいましたけど・・・貴族様が何やらケンカを始めてしまって起きてしまいました」


「ハハハ、それは困っただろう?巻き込まれないように気をつけないとな?キミの立場ならなお更思慮深く行動しなければならない。ギャプロと同じように」


しばらくドラゴラ様と話をしてから寮へ帰った。さすがドラゴラ様。話に含蓄あるわー。


「キーン。聞いた?例のやつ」


「ロッキさん。なんのことです?知りませんけど」


「キーンのクラスでしょ?あれだよ。あれ。」


ほら、決闘の・・と小声で言われる。


「え?まさか本当にやることになっちゃったんですか?」


「いや、さすがにそこまでは進んでないよ。ギリギリだったみたいだけどね。今は校長預かりになってるみたいだよ」


「いやぁ、なんとも言えませんね」


「そうだね。なんとも言えないね」


二人して苦笑いだ。貴族としての体面とか矜持とかって俺達からしたらアホらしい。主張がかみ合わなくてケンカするのはいいけど、それで命をかけるハメにまでなったらバカバカしいよね。まぁ貴族は貴族で大変だとも言えるけどさ。


とにかく今日も何事もなく無事に終わりそうだ。あっちがいくら決闘で命を落とそうが俺には全く関係ない。同じクラスにはいるけど、親しみなんてないしね。こっちはこっちで毎日気を遣わなきゃいけなくて大変なんだよ。


貴族の兄さん達、はしゃぐのは自由だがそういうのはよそでやってくれよ?

流れ弾には当たりたくないんでね。

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