第22話 王都の街角から

キーンです。いま王都の公園に来てます。部屋でだらだらするのはやめました。俺のなかのおっさんがキーンの幼い肉体を得たことで日曜日のパパ的な呪縛を解き放つことに成功したのだ。


気力を振り絞って外出してみたところ、見慣れない景色が広がっていて、気分も盛り上がってまいりました。現金なものですね。さっきまであんなにダルがっていたのにさ。


でも散歩するのは大好きなのです。子供らしく歌でもうたっちゃおうかな?

これで棒つきキャンディでも舐めてれば、同年代の子供になめられて、不良に殴られて地面を舐めることに・・。ふむ、まぁまぁかな。


公園にきた理由は一つ。ギャプロの対戦相手を探すため。誰かがギャプロをはじめるとギャラリーが集まりはじめるから、見つけるのは結構簡単だ。


ギャプロは盤と駒さえあればお金はかからないし、最高の娯楽だよね。お?あれそうじゃないか?早速接近してみましょう。どーもどーもでーす。


やってますねー。どれどれちょっと失礼して、見せてくださいな。うーん。うん?どっちが勝ってるんだこれ?わかりませんねー。かなりいい勝負と見た!見てるだけでも楽しいっす。


「おや、見ない顔だな。坊やもギャプロが好きなのかな?」


声の方を見上げると70歳くらい?の人族のおじいさんが無表情で立っていた。


「はい。見るのも好きできすけど、指すのも好きです」


こちらも負けじと無表情で対抗する。


「そうか。よかったら私と一局どうかな?」


「はい。ぜひ」


お誘いが嬉しくてちょっとにやけてしまったな。いかんいかん。無表情のポーカーフェイス。勝負はもう始まってるんだぜ?


夢中になって対戦して、気がつくとだいぶ日が傾いていた。やべぇ。寮って日没が門限だったよな。何回対戦したっけ?


「ごめんなさい。日が落ちる前に帰らなければいけないので、これで失礼します」


ちょうど区切りもよかったので、おじいさんにお礼をいって帰ることにした。いやー楽しかったわ。あのじいさん強いのなんのって。1回しか勝てなかったわ。それも偶然みたいなもの。悔しいけど面白かった。かなり勉強にもなったし。今度また相手してほしいなぁ。


寮に戻って夕食を食べる。食堂はなかなか混んでいたがはじっこの方の席が空いていたので着席。大変美味しゅうございました。


お腹いっぱいになったら眠くなってきたな。結構外にいたもんな。入寮初日から頑張りすぎたな。いや頑張ったのか?まぁいい。あとは部屋でだらだらしよう。明日の予定ぐらいは決めておくか。


コンコン!ん?うちか?コンコン!またドアが叩かれた。うちだな。


「いるか?」


間違いなくうちを訪ねてきてる。誰だろう?


「はい。どちら様ですか?」


ドアを開けながら返事をする。


「キミがキーンか。ハハハ。ホントにまだ子供じゃないか」


えーと。なんだこいつは。身長150センチくらいで痩せ型の人族の男だ。肌の色は白く髪は金髪に見えなくもない茶髪、茶色の目。


「申し訳ありません。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?今日こちらに着いたばかりでして・・不勉強で恐縮なのですが・・」


「アハハハ。そんなにかしこまらないでくれよ。僕がいじめているみたいじゃないか。僕はドーギス・パーシー。隣の住人さ」


ずいぶん明るいひとだな。しかも姓がある。あちら側の人間。つまりお貴族様。


「ドーギス・パーシー様。はじめまして。平民で孤児のキーンと申します。ご挨拶が遅れまして申し訳ございません」


「いいんだ。僕は女性と子供には寛容であれと決めているんだ。そんな風に挨拶されても嬉しくないな。隣になった縁だ。何か困ったことがあったら頼ってくれよ。分かったね?じゃあ僕はこれで失礼するよ。女性を待たせるわけにはいかないだろう?」


言うだけ言って去ってしまった。女性が待ってるとか待ってないとか俺の知ったこっちゃねぇです。


でも隣がお貴族様とかこの学校どうなってるの?普通最年少入学の子供にそんなやっかいなポジション押し付けるか?何も考えずにくじ引きで部屋割り決めたとか?


いや違うか。立場か。そうなんだな?平民で孤児の子供。これが全てというわけか。とりあえずあの子供の隣でいいんじゃね?文句いわれてもこわくないし?だって孤児なんだろ?とまぁこんなところか。


学校からの挑戦状は受け取った。よーし決闘だ!

距離は10歩。弾が無くなるか、どちらかが倒れるまで続行だ!


はぁ。むなしい。脳内劇場もいまいちキレが悪い。

ホント疲れた。もういいや。寝よう。

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