第10話 お金はお金

昨日はさんざんな目にあった。あまりの痛みに吐き気が止まらなかった。なんとか吐くのは我慢したけどさ。指はちゃんとある。一回は無くなったんだけどね。


魔法っていうのは本当にすごいよ。治癒魔法は奇跡のようだった。魔法というものがあんな奇跡を平気で起こせるものならば、攻撃魔法なんてものも推して知るべし。きっとものすごい凶悪なんだろう。


もし内乱なり戦争なり争いごとが起こったら、攻撃魔法が飛んでくるわけか。銃やミサイルはないけど、飛び道具はそれなりにあるってことだもんなぁ。まぁ、魔法が無かったとしても戦争には行きたくなくない。そんな事態になったら「自宅」に引きこもろう!


ズボンのポケットには昨日の報酬、銀貨5枚がある。破格の報酬?なのかな。節約すれば1ヶ月くらいの食費になる。結果だけを考えれば悪くない仕事だった。もう二度とやらないけどね。


院長先生には帰ってからすぐに報告した。悲しそうな顔をしてごめんねといわれた。食材納入業者であるパミルとこの町の長である貴族からの両面攻撃を受けたら、孤児院の院長としてはなかなかに苦しい立場だったのだろう。


それでもパミルからの話を一度はしっかり断ってくれたのだし、最終的に決めたのは俺なのだ。謝られるとこちらが泣きたくなっちゃうよ。


院長先生に報酬の銀貨を渡そうとしたが、あなたが稼いだお金なんだからもっていなさいとのお言葉をいただきました。


しかし今度のことでいい勉強になった。今まで周りにはいい人しかいなかったから、いつの間にか勘違いしていたのかもしれない。ここは地球じゃないし、人権だの倫理だの常識だのは前世の世界とは大きく異なるんだよね。


パミルにはかなり腹も立つが、うんと言ったのは俺。つまり自業自得。指だってもうなんともないし、報酬だってちゃんと貰えた。今回のことはいい勉強だったと思おう。


けどもうちょっと慎重に行動しないとな。10歳の孤児に職探しはかなりハードルが高かった。職探しは一度保留しよう。


それで今まで放置してきた切り札「自宅」をもっと有効に使えるように考えよう。今のままではこの札を切るタイミングさえわからないからね。


さてさて、とりあえず水汲みのお仕事にいきますか。

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