第9話 町長様はお貴族様
今日は魔法の実験台になる日。あれからパミルさんの話を聞き、まぁやってもいいかなと決めたのだ。目的地はこの町の中心部、いわゆる貴族街と呼ばれるエリアにある屋敷。屋敷の主はこの町の長。そう!町長様である。
ちなみにあの依頼が敬遠されていた理由も確認済みだ。やっぱ気になるもんね。院長先生と二人で町長様の屋敷を訪れ、いま目の前には町長様とその娘がいる。
「という訳で、早速始めよう」
仕事内容を確認したところで、町長様ことダンディお貴族様からお声がかかる。
「はい。よろしくお願い致します」
院長先生とはここでお別れ。俺に心配そうな目線を送ってきたが大丈夫ですよ先生!いざとなったら我が最終兵器「自宅」に引きこもりますから!
そうそう、敬遠されていた理由だよね?パミルさんからの情報では問題は娘の方にあるらしい。まだ12歳と成人前の子供だからなのか、単に父親の教育の結果なのか、性格が面倒くさいとのこと。
しかし町長様自身の評判はとても良いわけだから、気がついたら娘が変な風に育っちゃったってことか?
まぁどうでもいいか。こちらとしてはお金がちゃんと貰えれば文句はない。娘が多少面倒なヤツでもお貴族様の御心のままに!ってね。うそだけど。
「ではキーン。手を出して。さぁ、ローラやってみなさい」
娘のローラお嬢様は明るい茶髪に大きい瞳、すらっと通った鼻筋に白い肌。間違いなく将来美人になるだろう容姿をしている。
「はい。お父様。」
ローラお嬢様は、手にしたナイフを大きく振りかぶる。
ちょい、ちょい、ちょい!!何しようとしてんの!?あわてて手を引っ込める。
「え?どうして?お父様?」
とローラ嬢は泣きそうになって父親の顔を見る。
「キーン。何をやっている?」
町長様からお叱りの声がとんでくる。オイ!面倒なのは娘だけって話しだったよなぁ?パミルゥ?と心のなかで商人を呪いながら、どうしたものか考える。これまともに返事して通じるのか?
「申し訳ございません町長様。あんな高い位置からナイフが振り下ろされますと、切り傷どころか指がなくなってしまうと危険を感じたもので」
「うむ。そうか。ならば問題ないということだな?」
チッ!そういうことか。評判の良い町長といったって、中身はこんなものか。俺は貴族でお前は平民。同じ言葉を使いはするが、話が通じるなんて思うなよってわけか。
「はい。もちろん問題ございません。切り傷程度なら問題ございませんとも。ただしそれ以上となるさすがに私としても困りまして・・・」
「問題ない。指の再生程度ならすぐにできる」
え?そうなの?すげーな魔法。まーその話を完全に信じるわけにはいかないんだけど・・・さて、どうやって切り抜けようか。
なんて考えている間に、町長に腕を押さえられてしまった。お嬢様がナイフを大きく振り上げる。そして振り下ろされて・・・
実験は終わった。
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