第8話 商人さんがきた
今日は孤児院にパミルさんがやってきた。パミルさんはこの町に店を構えている商人の一人で、町から委託を受けて孤児院に食材を届けてくれる。
女性なのに、結構手広く商売をしているらしく、信頼も厚いようだ。子供たちも懐いていて、かまってくれとまとわりついている。お店の主人でもあるのに毎回毎回よく来るなー、従業員に任せればいいのに。なんてぼんやり考えていたら、パミルさんがこちらにやってきた。
「こんにちは。キーン君」
「こんにちはパミルさん。儲かってますか?」
「ふふ。えぇ、なんとかやってるわ。キーン君は相変わらず覇気がないわねぇ」
え?そうなの?俺ってそうなの?
「10歳にはとてもみえないわねぇ。さっきだってずっとぼーっとこっち見てたでしょ?他の子達とはなんか違うのよねぇ。どこがとははっきりいえないのだけれどねぇ」
そうなのか。そう言われてみれば確かにそうかもしれない。外から人が来たってはしゃいだりはしないし、遊んでくれとアピールもしない。
中身は元45歳なんだから自分的には当然だが、パミルさんには爺臭く見えてるのかな?でも人見知りの子供だっているわけだし、覇気っていわれてもねぇ。前言撤回。私はいたって普通の10歳児です。
「なんかあちこちで職探しをしてるそうじゃない?冒険者ギルドにも登録したって聞いたわよ?何かいい仕事は見つかった?」
「いやー。なかなか10歳児に合う仕事がなくて困っているんです。今度商業ギルドにも伺おうかと思っているんですが・・・」
「ふふふ。やっぱりキーン君って変わってるわねぇ。」
何がおかしいのかパミルさんは軽く笑っていらっしゃる。そんな風に笑わなくたっていいじゃない。まったく失礼しちゃうなぁ。
「パミルさんも何か適当な仕事があれば紹介してくださるとありがたいです。不肖キーン、誠心誠意勤めさせていただきますので、よろしくお願いします」
あんまり面倒なのはやりたくないけどね。
「キーン君って、どこでそんな言葉遣いおぼえてくるの?」
子供って不思議よねーなんて言いながらパミルさんは楽しそうにしている。こんなことで喜んでくれるならいいさ。せいぜい笑うがいい。だがいつか今日の借りを取り立てにいくぜ?たっぷり利子を上乗せでな!
なんて意味のない小芝居を脳内で演じて楽しんでいると、パミルさんは急にまじめな顔つきになって聞いてきた。
「実はキーン君に頼みたいことがあるのよ。院長先生には話したんだけど、いい返事もらえなくてねぇ。キーン君にも話しを聞いてほしいのよ」
院長先生には断られたってのに子供に直接談判ですか?辛いねぇ。
「もちろんです。是非聞かせてください」
聞くだけはタダだし、チャンスかもしれないしー。ありがとうと言ってパミルさんは椅子を2脚もってくる。座って話すほどの長い話なの?
「頼みっていうのはね、キーン君も知ってることよ。ギルドで聞いたでしょ?魔法の実験台の依頼のこと」
え、魔法の実験台?あぁ、確かに聞いたね。でもなんでそれをパミルさんが知ってんの?っていうかその話し断ったのも知ってるってことだよね?
やだなぁー。こわいなぁー。パミルさんてストーカーなの?もう僕お昼寝の時間なんでこれで帰ってもいいですか?え?だめ?やだなぁー。こわいなぁー。
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