第5話 冒険者ギルド

この国には冒険者ギルドというものがある。これは簡単にいうと、なんでも屋、または派遣会社といった感じだ。登録自体に年齢制限はなく、いくつかの例外を除いて誰でも登録できる。


登録後は仕事の依頼表を確認し、出来るものであれば受付で依頼を受ける。コネや実績があれば指名で依頼がくることもあるようだ。もちろんなんでもかんでも依頼を受けられるわけではなく、受付で依頼達成能力があるかを判断され、合格であればめでたくお仕事へGOというわけだ。


キーンも職探しの過程で登録はした。ギルドのメンバーカードも受け取り、何かできるものがないか、受付のお姉さんに相談した。するといくつか出来そうなものが教えてもらえた。


例えば、逃げてしまったペットの捜索。うーん。面倒くさそう。特徴だけが簡単に書かれた依頼票をみせてもらったが、無事発見!の画がまったく見えてこなかったのでパス。せめて写真とかがこの世界にもあればねぇ。


他には、道端での花売り。うーん。これはありだよね!お花屋さん的なものではなく、いくつかの花をカゴに入れて道行く人に売り込みをかけるもののようだ。


っていうか孤児院でも同じことやってるし!とツッコミたいところだが、それはそれ。孤児院では実益重視というより、社会に出るための準備の一環として花売りもしている。対人能力やお金の計算なんかが鍛えられるもんね!悪くはないが今さらなのでパス。


そして貴族の子弟の遊び相手。うーん。なんかやばい匂いがぷんぷんする。何をさせられるかわかったもんじゃない。途中不敬罪とか言っていちゃもんつけられて、剣の試し切りなんて話になる可能性だって無いわけではない。


ギルドは仕事中のトラブルには干渉しないし、ギルドメンバーを保護しようなんてこれっぽっちも考えていないだろう。仲介手数料を得る以外に興味がないことは分かっている。


あらかじめ読んでいたギルドの規約にそういった主旨のことが書いてあったのだ。もちろんかなーり遠まわしにだけどね。しかし庶民が貴族の相手をするリスクについてはいっさい注意や忠告もない。パネェな冒険者ギルドとため息をついてこれもパス。


次に紹介されたのが魔法の実験台。モロだな、おい!と思ったが内容を確認。どうやら治癒魔法の練習のためのものらしい。ちょっと血が出るくらいの傷を付けられ、それを治癒魔法で治す。


魔法が失敗すること可能性もあるが、命の危険はない。待遇のいいところでは、失敗したらすぐに別の魔法使いが治してくれるらしい。弟子のために師匠が治すってことかな?なるほど。


おそらく動物などで試して、いよいよ人間だ!ということなんだろう。動物で練習なんて面倒くさい、最初から人間だ!ということでも、切り傷くらいなら別にいい気もする。


子供でも可ってところに異世界クオリティを感じるが、この条件なら貧しい者には人気なのではないか?ちょっと聞いてみようかな。


「お姉さん、この依頼っていつから出てるんですか?」


「これ?えーと1ヶ月前からね。受けるの?」


「うーん。どうしようかと思いまして。でも1ヶ月も前からあって誰も受けないってなにか理由があるんでしょうか?」


「そうねぇ・・・この手の依頼は人気あるから・・・なんでだろうね?」


話の行間を読め!とそういうことですね?なるほど。つまり事故にあう確率が高いヤツなんだろうなぁ。お貴族様だかなんだか知らないが君子危うきに近寄らずってことでこれもパスか。


他にもいくつかデンジャラス臭やエンドレス臭が強い仕事を紹介してもらったが、

もう無理無理。とてもできるものじゃございません。謹んで辞退させていただきました。


ご縁が無かったということで。アバヨ!

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