第4話 職探しの旅
「キーン、調子はどうだ?」
孤児院の年長組である我等が頼れる兄貴、フロト君15歳が声をかけてきた。
「うん。とりあえず聞いてみたけどやっぱり10歳の子供じゃだめみたい」
「そうか。お前は頭いいんだし、礼儀もしっかりしてるから焦らなくていい。大きくなるまでしっかり勉強だな。俺だって最近になってやっと見つかったぐらいなんだからよ」
「ありがとう、フロト兄さん。見つかったのってあの人だっけ?あのー、なんていったっけ」
「ギリアムさんだよ、行商人の。俺はあの人に弟子入りして将来は商人になるんだ」
フロト兄さんは笑いながら教えてくれた。
ふむ。行商人の弟子か。お外は危険がいっぱいだけど、大丈夫かな?
「なんだその顔は。心配してくれてんのか?大丈夫だ。ギリアムさんは行商一筋30年のベテランだぞ?既に弟子も二人いてもうすぐ一人は独立するらしいからな」
「そうなんだ。でもよく見つかったね。行商人なんて色んなとこいってるから弟子になりたい人だってたくさんくるでしょ?」
「ああ、そのとおり。でも試験してもらって合格したのはこの俺だ!すごいだろ?」
「さすがフロト兄さんだね。計算能力も高いし、空気読めるし、弟達の面倒見もいいし!」
「ハハハ!だろ?といいたいところだが・・・」
なんだろ?何かお悩みでもあるのかな?
「半分はお前のおかげかもな、キーン。お前みたいな天才が近くにいたからな。
そりゃ俺もがんばったぜ!」
天才?オーバーだなぁ。多分計算能力や考え方、礼儀なんかが大人びていることをいってるんだろうけど、そんなに大したものでもないんだけどなぁ。
「俺が独立したらお前を雇ってやるからな!待ってろよ!」
頭をガシガシ撫でてからフロト兄さんはいってしまった。行商人かぁ。大変そうだよな。街から街への移動はいくら護衛の人がいたって命の危険が常にある。
自分に自信があるなら別だが、完全に護衛頼りで外に出たくはない。やっぱり街のなかで職を見つけるのが無難だ。うーん。「自宅」を使って荷運びとかは出来るけど、この能力がばれたら間違いなく碌な目にあわないだろうな。
職探しの旅こと街での散策は上手くいっていない。やはりネックは年齢だ。親の仕事を手伝う子供は多いが、他人を雇うのにわざわざ子供を使う人はいない。
試しにいくつかのお店で聞いてみたが、うんといってくれるところはなかった。やはりわらしべ長者的に、元でのかからないものを見つけてこつこついくしかないのだろうか?
キーンの職探しはつづく。
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