第3話 とりあえずどうしよう
アロンソ王国での成人は16歳。16歳になったら孤児院を出て独立しなければならない。そのため孤児院での時間はあまり無駄にはできない。孤児院を出るときに住むところの家賃1ヶ月分と、これまた約1ヶ月分の生活費が貰えるらしいが、それでは当然1ヶ月でお金はなくなり、家も追い出されることになる。
成人するまでに仕事が見つかればいいが、見つからない可能性だってある。そして困りに困って犯罪を犯し、奴隷落ち。さすがにそれは嫌だ。もう本当に無理だ。
「自宅」があるから最悪住むところの心配はないものの、食費は稼がなければならない。仕事を探す時にしたって、お住まいはどちらですか?と聞かれて、「はい、これが自宅です」なんて見せるわけにもいかない。
結局住む家は必要となってくるのだ。ということはどうしても、お金を貯めなければならない。だがいくら前世の記憶があったところで見かけは所詮10歳児。今のうちから稼ぎたいと気を逸らせても仕事なんてありゃしない。
孤児院の諸先輩方のように14、5歳になるまでお手伝いや勉強して、それから職探しという方法もあるが、早くに始められるならそれに越したことはない。
これはあれか、まずはボードゲーム的なものから始めていけば鉄板か?と内心思っていたのだが、この国にも似たようなものはあるらしい。
「将棋、チェス、碁、すごろく。うーん、なかなか厳しいよなぁ」
前に見かけたのは「ギャプロ」という名のボードゲームで内容は将棋やチェスに似ていた。まったく同じものではないから上手くいけば売れるかもしれないが、ギャプロの普及率はかなり高いようで、割り込むにはかなりの時間と労力がかかると思われる。他に何かあったかな?と考えるが、これが意外になにもない。
ちなみにアロンソ王国の文明水準はざっくり中世ヨーロッパ並み。電気、ガスなどもちろんない。交通手段は馬車だし、職業の幅も広くない。
だったら現代知識で大金持ちに!と期待したいところだが、その知識を探ってみても使えそうなものが思い浮かばない。
農業、工業の知識は持ち合わせていないし、便利な道具も思いつかない。井戸のポンプは既にあるし、無かったとしても多分作れなかったと思う。
武器は剣や弓がメインのようで、銃なんてものはないが、それだってなんとなく仕組みは知っていても火薬の方は無理だ。火薬は探せばどこかにあるのかもしれないが、とりあえず今までは聞いたことがないし、銃の知識を提供したら頭いい人が作れるのかもしれないが、それはしたくない。
その内なにか思いつくかもしれないし、基本的な事務能力や接客能力なんかのノウハウ的なものはあるのだから、この国の一般的な人たちより多少有利なのはかわらないはずだと考えて、とりあえず職探しの旅に出ることにした。
では、いってきまーす。
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