第6話 花売り
孤児院生活での日課である水汲みを終え、自分より年少の子供の面倒をみながら、ぼーっとしてみる。いつの間にやら教室は卒業扱いになっており、逆に教師役を与えられていたが、それも2日に1回でいいとのこと。
早くから職探しに励むいたいけな10歳児の健気な姿を見て院長先生から頂いたありがたいお言葉だ。マジありがたいっす。いつか恩返しをしなければ!
あぁ、教室とは孤児院内での学校のようなもので、字の読み書きを教わり、次に簡単な計算を教わる。また世間の常識や注意点などの授業もあり、院を出た後の時の為にここで準備をするのだ。そしてある程度年長になってくると年少の子の教師役も勤める。
今日は午後が自由時間の日。さて何しようかと考えていると水色の髪をした少女がやってきた。
「キーン、あそぼー」
「ロンダ。いいけど、教室は?」
「私とバースは今日は外だよ」
「そと?あぁ、花売りね」
「うん。だからキーンも一緒にやろうよ」
花売りかぁ、最近やってなかったなぁ。サボってるわけじゃないんだけど、院長先生が変な気をきかせたのか、当番に当てられないんだよなぁ。
「そりゃいいけど、あそびって?」
「あれだよー。誰が一番早く売り切るか競争するやつ」
「あれね。オッケー。でバースは?」
「先に花の準備してるー」
「よし、じゃあ行こっか」
「うんー」
バースは茶髪で黒目の、この国ではよく見かける感じの普通の男の子だ。ロンダの水色の髪は結構珍しく、どこか異国の血が流れているのだろうと思う。顔も整っていて、いわゆる美少女の部類に入る。
ちなみに俺だが、やはり茶髪の黒目で、顔は多少彫りが深いものの、かっこいいかといわれれば10人中2人くらいはかっこいいかも?というぐらいの、平凡な顔立ちだ。
「よし、じゃあ競争だからな!」
お?バース君張り切ってますねー。いいですよぉ。
「うん。勝った人が次のおやつの日のおやつを貰えるんだよね?」
ロンダ選手もやる気をみなぎらせているようだ。賞品の確認に余念がない。
「了解!じゃあ先に売り切って院長先生のところに戻った人が勝ちってことで!」
「ああ、キーンには負けん!」
「僕もがんばるよ」
バースの負けない宣言を軽く聞き流し、いざ出発!花を売るのに決まったルールはない。街を歩き通行人に声をかけ売るのもよし。一箇所にとどまって買ってくれる人が現れるのを待つのもよし。家を回って訪問販売をするのもよし。
この街は治安もよく、誰にことわって商売してんじゃコラ!なんてことにはならない。経済状態も悪くないので、平民でも花くらい買う余裕はある。
さて今日はどうやって売ろうかな?いつもなら公園やカップルが集まるようなところへ行って、買ってくれる人を探すんだけど、今日は気分を変えて違う方法にしてみようか。ずばり!訪問販売だ!
売って売って、オラ銭こ稼ぐだー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます