夜話 その2

 [あの とも座の上、あんまり光ってはおらんが 横長に 星が散りばまっているのが わかるかぃ?]

『横にぃ?』

[そぉ とも座の 少し上から、左の方へ]


 よぉ~く 目をこらすと、空には 沢山の星が 光っていて

真っ暗だと思っていた空は 海で、もっと上は 星で、一杯だった。


 「こんなに 星出てたんだ…」

[そうじゃよ。今は 星が良く見える時期じゃからの]

『ほんとぉ すごいねぇ』

「あッ 何となく、横に並んでる感じが わかるかもしれないです」

『ホント?』

「あれが とも座でしょっ その上から…」

『う ぅん…なんとなぁく』

[光が弱いからのぉ よくわからんかもしれんが、それが うみへび座じゃ。横に長くて こうやって全体像が見えるのは、海の上で位しか見れんのじゃ]

「お家からは 見れないの?」

[そうじゃな。今からの季節 夜一晩中 眺めておれば、全体像が 動いてみれるかもしれんが、それでも 尻尾までは、中々見れんじゃろうの]

『何で 尻尾が見れないの?』

[尻尾が 出る頃には、夜が明けてしまうからじゃ。南半球の方では 見れるんじゃが、日本では 南の端の方でしか見れんじゃろうのぉ]

『そうなんだぁ』

[北半球と 南半球では、見える星が 違うんじゃ]

「理科の時間に 習いました」

『た、多分…』

[今 とも座が 見えとるから、うみへび座の尻尾までは 出ておらん事になるのぉ]

「もう少ししたら 見える様になりますか?」

[どうかな?空が明るくなってくる時間と 重なりそうかもしれんの]

『そっかぁ』

[その尻尾の辺りには 昔 鳥座があったらしい]

「今は 無いの?」

[今は 正式には、鳥座が無い事になっとるの]

『へぇ』

[実際に 星はあるんんじゃが、光が弱すぎて 肉眼では見えんからじゃろ]

「昔は 見えてたんだ」

[そうじゃの、昔と今では 星も変わってきておる。星の寿命もあるんじゃろうし、地球の 大気汚染の所為でもあるんかもしれん]

『変わってきてるんだ』

[街に近いと それも影響するじゃろうし、街自体が 明るいから、余計に 見えんのもある]

「山とか 星が良く見れるって、聞いた事があります」

[そうじゃな。山は 空気が澄んでいるからの]

『そうだよ~ 空一面! 星で一杯で、降ってくるみたいだったよ~』

[おぉ キーちゃん は、山の空を知っておるのかぃ?]

『はい 前は、山の方に住んでいましたから』

[そうかい。でも 鳥座は、海に近くないと 見えんかったじゃろうのぉ]

「山でも見えないんですか?」

[標高が高いのも 水平線ギリギリに出て、隠れる星は 見えないのもあるんじゃ]

『じゃぁ 鳥座は、海の傍でしか見れないの?』

[恐らく そうじゃと思うのぉ]

「海の方だけなんだ…」

『それで?潮の話は?』

[おおぉ そうじゃ]





ーーーここからは おじいさん の話ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 あの うみへび座と言うのは 海とはついておるが、ただの 水蛇の事らしい。

そして 鳥座は、つぐみ と言う鳥の事らしいんじゃ。

その2つの星座の 伝説も、ちゃんとあるんじゃろうが 

そこまで 詳しい事はわからんがの。蛇と 鳥が、お互いを 

牽制し合いながらも、何やら 絆を深めていっていたらしいよ。

 じゃが、鳥が 船の事故に巻き込まれ、溺れそうになったそうじゃ。

そこを 蛇が、水中から 押し上げて、救おうとしている姿があの星座に

なっておるとかで、だから あの とも座を、わしら 船乗りは 縁起が悪いのも

あるんじゃが、そういう意味でも「友」と言い換えて 呼ぶ事にしておる。


 そして ある入り江ではの。

その入り江は やはり満潮の時と、引き潮の時とでは 水面が変わるんじゃ。

入り江の傍に 満潮の時だけ、現れる沼があるそうじゃ。きっと 地中で

繋がっとるんじゃろのぉ。

 その満潮の時、3つの星座が、一遍に見えて。入り江の水面から 

鳥座が出ている時に、その沼の水を汲んで 一緒に飲んだ友とは

一生 仲良く暮らしていけるという話じゃ。




ーーーここからは 3人の話ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[あんまり 細かくは覚えておらんが、そんな話を 聞いた事があるのぉ]

「わぁ それは、どこのお話なんですか?」

[さぁ どこの話じゃったかのぉ]

『素敵なお話ぃ』

[そうじゃの 潮の満ち引きで、現れる沼とか 友達の絆とかのぉ]

「外国のお話?」

[ぅ~ん… とも座が しっかり見えない所の話じゃから、北半球… もしかしたら、日本でも おかしくない話じゃのぉ]

『思い出して下さいよぉ~』

[そうじゃな 他の乗組員にも聞いてみるよ]

「『お願いします』」


 [さぁ おじいさんも 一休みするよ。眠れるかぃ?]

『「はい」』

[明日 2時頃に着くから、それまで ゆっくり休んでおくといいよ]


 

 2人は 部屋に戻って

『ロマンチックな話だったねぇ』

「潮が満ちた時だけ出来る沼ってね」

『うんうん!』

「潮って 怖いとしか思ってなかったけど、そういう話だと ちょっと興味湧いたなぁ~」

『そうだね』

「どこのお話なのか わかる人が居ると良いのに…」

『そうだねぇ わかったら 行ってみたいね!』

「うん」


 そう話ながら いつの間にか、2人は 眠りに就いていました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る