夜話 その1

 キーちゃん が、寝返りをすると。本が バサッっと落ちて

ベッドの柵に 足をぶつけてしまい

『痛ッ』

『ツーっぅ 痛たたぁ~』

目を開けると 部屋の電気が消えていて、ようちゃん の方の読書灯が

ぼんやり燈っていて…

「クスン   クスン…」

と 小さく声が聞こえます。


 本を 拾いながら

『ようちゃん 泣いてるの?』

「!  …っん」

『ようちゃん?』

と ようちゃんのベッドの方へ。

 ようちゃん は 頭から毛布を被り、小さく うずくまっていました。

もう一度

『ようちゃん』

と言うと

毛布から 顔を出し、泣いてた感じなのに

「ぅうん 大丈夫」

と 言います。

『大丈夫じゃないじゃん』

「大丈夫だよ…」

『どうしたの?どっか辛い?』

「う…ン ちょっと」

『ぅん?』

「昨日も あんまり眠れなかったから…」

『あ そうだったんだ、ゴメン 全然、気付いてなかった』

「本読んでたんだけど、何か 一人になって、寂しくなったの」

『あーー ごめぇ~ん』

「ううん イイの、もう 大丈夫だよ」

『そうぉ?』

「うん。」


 『ねぇ? ちょっと 部屋の外出てみようか?』

「えっ?」

『滅多に 船って、乗れないもん 探検しない?』

「えぇ~ 怖いよ」

『平気だよ 行こ行こ!』

「えぇー」

 キーちゃん は、コートを羽織り始めた。ようちゃん も 仕方なく

コートを着て、ドアを開けてみた。


 廊下は 少し暗くなっていたけど、フットライトが点いていて

ひんやりして、静かでした。

「怖いよ…」

『ン』

 でも キーちゃん は、1歩出てみて

『何か 宇宙船の中みたいで、ワクワクするw』

「えっ ァッ行くの?」

『行ってみよ! ちょっと行ったら、戻ればイイじゃん』

「え~~」

キーちゃん が行ってしまうので、シブシブ ようちゃん も出てみた。


 エントランスの所は 明るかったけど、ホールも 図書室も

鍵がかかっていていました。

『うぅ~ん どこも開いてないか… 図書室が開いてると思ったのに…』

「ねぇ 戻ろ」

『うん…』

 と、戻り始めたつもりだったけど。


 進んでみたら 甲板への出口だった。

『ちょっと 外の空気吸うと、気持ちイイかもしれない』

「ダメだよぉ おじいちゃん が、2人だけで 甲板に出ちゃダメだって…」

『ちょっとだけ 開けてみよ』

キーちゃん が ホンの少しだけ、扉を開けたら 風で

バタンっと 大きく開いてしまって、ビックリした。

「『わっ!』」

キーちゃん が、慌てて 閉めようと、ドアノブに 手をかけて

改めて 周りを見てみると…

風が ゴーゴー吹いていて、波を切る ザーァザーァという音

どこまでも 真っ黒で、何も見えない 景色。

 急に 怖くなって、ドアを引くけど 風の所為で、重くて 閉らない。

ようちゃん も手伝って、2人で 懸命に引くけど、その途端に

船が揺れて、2人共 反動で、甲板に出てしまった。


 急いで 戻ろうとしたら、ドンっと 何かにぶつかった。

「『キャッ』」

[おぉ ココの居たのかぃ]

ぶつかったのは おじいさん でした。

[部屋を見に行ったら 居ないし、風が入ってくるから まさかとは思ったけど、ダメじゃないか 2人だけで、甲板出ちゃ]

『「ゴメンなさぁ~い」』

[どうしたんだね?こんな時間に]

『探検したくて』

「あっあ! 私が眠れなかったから、キーちゃん が 付き合ってくれたの」

[眠れなかったのかぃ?]

「私 海が苦手で…」

『あぁ そっか!ようちゃん 海嫌いって言ってたね、ゴメン』

「ぅン…」

[ようちゃん は、海 苦手だったのかぃ?]

「は…ぃ」

『ようちゃん 海の潮で、怖い思いした事あるって』

[潮…  そうだったのかぃ。まぁ とにかく中に入ろう、ここは 寒いからね]

おじいさん は、バタンと ドアを閉めて、船長室へ 連れて行ってくれた。



 船長室には 大きいデスクと本棚、壁には 世界地図、地球儀があったり

ソファセットに 座って、2人は キョロキョロ。


 [眠れないとイケナイから この方がイイね]

っと ホットミルクを作ってくれた。

その間に ようちゃん は、怖かった 海の思い出を、おじいさん に話した。

[そうかぁ それは怖かったね。確かに 潮を甘く見たら、ダメだね]

「う…ん」

[おじいさん は、ずっと外国船に乗ってきたからねぇ~ その潮にのって、船を進める時もあって、潮を読むのが 船長の腕の見せどころだったりもするんじゃ、潮とは 切っても切れん仕事なんじゃよ]

『世界中?』

[そぉ 世界中周ったねぇ]


 [そうじゃ どこの国の話じゃったかのぉ。潮の話があったのぉ]

『どんなお話ですかぁ?』

「こ…怖いお話ぃ?」

[いや… 怖くは無いよ。 ぅ~ん? 今 見えるかな?]

 おじいさんは スクっと立って、窓の外を見た。

[2人共 こっちへ おいで]

2人も 窓を覗くと、外は 真っ暗でした。

[海と空の 境目がわからんだろ?]

『はい 真っ暗で…』

[ず~っと 先の方に、小さい星が 光ってるのが見えるかぃ?]

「ぅ~ん…?」

[ず~っと 先じゃ]

『あっ あの小さいの?』

「えっ どれどれ?」

『あそこ 真っ直ぐの所』

「あぁ ホントちいさぁ~いの。あれ 星ですか?」

[星なんじゃ]

「ちっちゃぁ~い」


 [あの星は とも座の一部なんじゃ。あの辺りが 水面で、目印になるんじゃ]

「とも座?」

[日本でも 南の方で、時間に寄って見える時と そうで無い時があるがな]

『とも座 って、お友達の?』

[いや 本当は、とも と言うのは、船の尾を差す言葉でな。水面 スレスレに見える事から、日本では 船が沈んでいる様に見えるから、わざと 船乗り達は「友座」と呼ぶが、その話を どこかで聞いたんじゃ]

「そのお話が 潮と関係するんですか?」

[確か そうじゃったな]

『えっ どんなお話ですか?』

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