参話

ここからは 3人の話。


『えぇ~?蛇さんは どうなったの?』

【蛇も きっと埋もれてしもうたんじゃないかね】

「かわいそう」

【それでも 何か…蛇の伝説もあったかもしれんねぇ】

「そうそう そのお話が、桜花村は「謳歌」とも書くよって お話してくれたじゃない?」

【私がかぃ?】

「そう おばあちゃんが話してくれたよ」

【へぇ そうじゃったかのぉ】

「私の七五三の時」

【ようちゃん の七五三…】

「漁師のおじいちゃん家に来てくれたでしょ?」

【私は あのお宅には行った事が無いよ】

「嘘々 来てくれたよぉ」

【私がかぃ?】

「うん!」

【あぁ~ そりゃぁ もしかして?やす姉さん の方じゃないかね?】

「やす姉さん?」

【そう やす姉さん】

「やす姉さん って?」

【おや? ようちゃん は、おばあちゃんが 双子なのを知らないのかぃ?】

「おばあちゃん 双子なの??」

【そうだよ。やす姉さんは 今も、その松山に住んで居るんだよ】

「えー 知らないぃ」

【そうか やす姉さんが 話したのかもしれないねぇ】

「そうだったんだぁ てっきり、おばあちゃん だとばっかり思ってた」

【双子だからねぇ 昔から良く間違えられたよw】

「そっかぁ」

『じゃぁ 謳歌村の話は、そっちのおばあちゃんに聞くとわかるの?』

【そうだねぇ おばあちゃんも聞いたかもしれないけど、覚えて無いねぇ】

「やすおばさん の居る 松山って、どこにあるの?」

【南の方だよ ちょっと遠いねぇ~】

『そうなんだ…』

【あぁ でも、明日 おじいさんの 船で出るから、確か そっちの方を回るんじゃなかったかねぇ?聞いてみるかね】

「『うん!』」



 おじいさんが 帰ってくるのを、2人で待った。

おじいさんは 車の時には、よくわからなかったけど 

背が高くて、がっちりとした体格。

鼻の下から頬、顎まで 立派な髭が生えてて、薄い黒色レンズの眼鏡をかけている。

大きな荷物を 持って入ってきて

[ただいま]

と一言だけ。

 ようちゃんは おじいさんが入ってきたら、おばあちゃんの陰に

隠れてしまった。

【あらあら… ささっ ご飯にしますよ】


 ご飯時に おばあちゃんが、2人を明日 船に乗せてやって欲しいと言うと。

おじいさんは 黙って すっと立って、電話をして

[いいよ]

と 一言だけ返事をして、明日の準備をしに 部屋へ行ってしまった。

キーちゃんは 喜んで

『わぁ~い』

と はしゃいでいたけど、ようちゃん は あんまり元気無かった。



 寝床に入ってから

キーちゃん が

『おじいさん 何もしゃべらないね』

「うん… 私、初めてなの」

『え?初めてなの?』

「うん。いつも 船に乗ってるとかで、居なかったから」

『あぁ そうなんだ』

「多分 生まれてすぐ位に、私を見に来てくれたらしいけど そんなの覚えてないもん」

『それで 隠れたりしてたんだ』

「あ、 ぁうん」

『かっこいいよねぇ~ ガッチリしてて』

「何か あの髭が、こわい…」

『ぅ  …ん そぉ  …』

「?」


 キーちゃんは 疲れてしまったみたいで、寝てしまってました。

ようちゃん も、寝ようと思いました。




 翌日 船は、夕方前に出るから [迎えに来る]と言って、おじいさんは

先に出て行きました。

【ようちゃん達も 荷物まとめたりしないとね】

「『はぁ~い』」



 午後3時頃 おじいさんの船。

おじいさんは フェリー船の船長さんです。

ようちゃん達の 荷物も軽々と持って、部屋へ連れて行ってくれた。

2段ベッドが 2台ある部屋でした。

[この部屋は 4人部屋だけど、どこで寝るかは 後で2人で決めるとイイよ]

と、言って 荷物を置いて。船内の案内をしてくれた。

 

 映画も観れるホール や、ゲームセンター・図書室、コンビニもありました。

普通は 入れない、操縦室や 機関室にも 見せてくれました。

色んな機械や 沢山の人が、働いていて おじいさんに話しかけたりして

すごく忙しそうだった。

[もう少しで 船が出るから、お部屋か ラウンジにでも居てくれるかい?食事の時には 館内放送が入るから、レストランへ行くといい]

「『はぁ~い』」

[甲板は 2人だけで、出たらダメだよ。風が強いし 寒いからね]

「『はい!』」


 しばらくすると おじいさんの声で、アナウンスがあり

[船長です。これから 本船は、出航致します]と。


『すごぉ~い カッコイイねぇ!』

「ぅ …ん…」


 ボーーッ ボーーっと 大きな音が鳴って、ちょっと揺れ出して

船が出た事が わかった。


 2人は ラウンジへ。奥の方に フェリーの模型と、航海路とか色々な 

船の説明のパネルが貼ってあって、それを 見ていました。

 おじいさんが言ってた通り、館内放送が入り

レストランへ行くと、沢山のお客さんが 乗っている事に、びっくりした。

 2人共 どうしたら良いか、わからず 立ちすくんでいると。

ウェイトレスさんが

《お名前は?》

「よう です。」『キー です。』と ちっちゃく答えた。

《あぁ 船長さんの》

と、テーブルに案内してくれた。


 夕食は ディナーで、とってもおいしくて。

キーちゃん は バクバク沢山食べた。

ようちゃん は あんまり食べなかった。


 部屋に戻って 2人共、下のベッドに寝る事にして

早速 キーちゃんは、寝る支度を 始めた。

ようちゃん は、ベッドに座ったまま 小さく溜息をついていた。

『ようちゃん 何か、元気ないねぇ』

「ううん 大丈夫」

『そう? それにしても 船って初めてぇ!少し揺れる時もあるけど、何か 不思議な感じだね。こうやって寝れちゃうし』

「うん…」

『あぁ 明日の何時に着くんだろう?』

「うぅ~ん 3時過ぎに出たから、2時位じゃない?」

『えー そんなかかるの?明日中に 帰れないのかな?』

「そうなるね。ユキおばあちゃん が、やすおばさん に電話しておくって言ってたよ、泊めてあげてって」

『どうしよぉ 宿題やってないよ…』

「www 教えてあげるから」

『あぁ こんなに長くなるなら、ちゃんと やっとけば良かったぁ』

「私は 殆どやってあるわ」

『ようちゃん は、そういうところ エライよねぇ』

「フツーでしょっw」

『いや エライよ! あっ でも、お母さんに 読書感想文の本だけでも持っていけって言われたから、その本あるから 読もうっと!』

「そうね 私も、本持ってきた」

『うん 頑張って読むよ!』

「そうしよ」


 そう言って 数分もしないうちに、キーちゃんは 寝息を立てて

寝てしまっていました。

 ようちゃん は、本に夢中です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る