リンク-Brain Wave-

まはまは

第1話

 西暦2065年。僕らの生活は大変豊なものになった。それは古代ギリシアのような生活だ。古代ギリシアでは市民と奴隷、いわゆる階層的なピラミッドが存在していたんだ。だからこそ自由な市民は、余暇を、人生を謳歌していた。市民の生活は暇な時間を潰すために、生きる目的を探していたということだ。そんな古代ギリシアでは、哲学や文化などさまざまなものが開花した。どうだろう、みんな?すごいよね、奴隷がいるからこそ古代ギリシアは栄華を極めたんだ…!

 おっと、話が逸れてしまったね。つまり僕が何か言いたいかというと、古代ギリシアの奴隷は現代のAIにあたるんだ。少し語弊があるけど、実際に僕らの生活は非常に過ごしやすいものとなった。でも、AIは古代ギリシアの奴隷ほどまだ働き者ではない。そこで僕が開発した「ハイ・リンクシステム」だ。この技術はもう実用化されていることは、ここにいるみんなは知っているよね?まぁ、念のために説明しておくね。この技術は人の脳波を他の誰かと共有する。人の脳の動きを演算するためにはとんでもない労力が必要になる。スパコンを積めば、電力の消費が激しい。だから僕はその演算をAIにさせたんだ。人の脳波演算だけに特化させてね。AIは特化させたものにすごい能力を発揮する。そこに目を付けた僕は、その脳波状況をクラウド上に共有することにしたんだ。

 そして、共同開発しようと持ち掛けてくれた企業が現れた。自動車メーカーの「ガラッシア」だ。「ハイ・リンクシステム」を運転者同士で共有し、お互いに安全を確かめるものだ。2065年、とてつもない人口減少とえげつない高齢化に我々社会は悩まされている。僕らのような若年労働者が貴重なものとなった。そこに憂いてくれた先人たちが、AIという素晴らしい技術を残してくれた。本当に感謝してもしきれないよね。だって、病院の診断や手術、為替レートや保険の診断…。例を挙げたらきりがない、それほどまでにAIは我々の社会を支えてくれている。…あ、ごめん。また話が逸れてしまった。本当に僕の悪い癖だよ。

 自動車に「ハイ・リンクシステム」を構築して、運転者同士の脳波情報は共有されている。AIによる自動運転車もあるけど、高齢者は進んで乗ってくれない。全ての運転をAIに任すのが怖いのだろう。したがって、僕はそんな高齢者や長距離運転者、初心運転者などに安心して乗ってもらえる技術を開発したんだ。AIが運転者の状況を察知し、例えば「緊張する」、「イライラする」など分析する。さらに、認知症や酒気帯び運転、薬物運転者、自殺志願者…。運転するのにはふさわしくない人を察知し、共有するんだ。すると、あの車の運転者は危険だと理解できるよね。プラスそれらの人々が運転すると、警報音が響くシステムになっている。警察へ要注意という通知も届く。これらの情報を成立させるために、強いbluetoothを整備し独自のクラウドも構築したんだ。

 実際にこの「ハイ・リンクシステム」を搭載した車が販売されると、事故は激減した。これは開発者として、本当に誇らしいよ。さっきの危険な運転が減り、事前的な事故防止を成立させたんだ。この「ハイ・リンクシステム」を僕はもっと進化させようと思う。AIのシンギュラリティは知っているよね。AIによるAIの独自進化、指数関数的な進化だ。現代のAIに終わりのない進化はない。そして、現代に古代ギリシアが完全に復活する。…今日は、みんなありがとう。ところどころ熱が入ってしまって、長くなってしまったよ。本当にお疲れ様。

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