第3話

「ダメですか? 私の助手代を前借り10年分じゃなくて20年分でもいいですから」

「いや、だからそういうことではないんだよ、アサキ。今、理由を話すから」

 ニュートンはお釣りとしてアサキが持ってきたコンペン硬貨偽造硬貨をアサキに見せた。

「アサキ、このコンペン硬貨偽造硬貨の”代償”は悪質なんだよ。普通のお金で買った薬を与えたとしてもダメなんだ」

「え?」

「この偽造硬貨の厄介な特性だ。”代償”に相当する、あるいはそれ以上ののお金でなければ同じ薬を与えても効かない。効いたとしても今度は、ソントンさんか婦人がまた病になるだろう。連鎖は途切れない。”代償”の支払いは続く」

「ひどい……一体、誰がこんな偽造硬貨を造ったのかしら」

「それは私も調査中だ」

「じゃあ、どうすればいいんですか?」

「とにかく今の”代償”と同じ価値かそれ以上のものを支払えばいいんだが」

「その”代償”ってどうやって支払えばいいんですか?」

「メモにも書いたファ同額のコンペン硬貨偽造硬貨を使って薬を買っても病は、使った者に移動するだけだからね」

「そんなぁ……」

 アサキは、熱でうなされる男の子の事を思い出していた。

「おとうさんと、おかあさんへのプレゼントを買う為に貯金もしたのに……そんな子がこんな目に……ソントンさんだって、元々、奥さんの病気を治すためにした事じゃなかったし、そもそもコンペン硬貨偽造硬貨って知っていて使ったわけじゃないんだから!」

「まあ、冷静になって考えようか」

 ニュートンは椅子に腰掛けた。

「納得のいなかいのは私も同じだよ」

 持っていた偽造硬貨を机に置くとアサキに言った。

「とにかく、”代償”に相当するかそれ以上の価値がある本物の貨幣だ手に入ればいいんだ」

「”代償”と同じ価値……”代償”と……あっ」

 その時、アサキの表情が変わる。何か思いついたようだった。

「どうした?」

「ニュートンさん、私、いい方法を思いつきました!」

「ん?」

「もう一度、ソントンさの家に行ってきます!」

 そう言うとドア開けて事務所から飛び出していった。

「やれやれ、やっと気がついたようだね」

 ニュートンはニヤリと笑ってコンペン硬貨偽造硬貨を放り投げた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る