第291話草枕  柿本人麻呂

草枕

  旅のやどりに

        誰が夫か

            国忘れたる

                 家待たままに


                  柿本人麻呂 万葉集巻3 426



柿本人麻呂は、香具山のほとりで、行き倒れの死人を見て、

「どこの誰の夫なのだろうか 帰るべき故国も忘れ,、倒れ死んでいる。家の人も心配して待ち焦がれているだろうに」

と詠んだ。


当時、地方から様々な理由で都に出て来て、帰りには帰るための金が無くなってしまうとか、あるいは強盗に襲われる、または病気になってしまい治療も受けられず、道端で行き倒れになる人も、多かったようだ。



それにしても、哀しみにあふれた歌。

行き倒れになった人たちの無念と涙は、どうなったのだろうか。

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