第97話ふるさとの

ふるさとの

     春を忘れぬ

          八重桜

             これや見し世に

                    かはらざるらむ

                         

                            続後選和歌集


世の中は変わりましたが


あなたが かつてお住まいになっていた


このふるさとの 八重桜が咲きました。


この八重桜の美しさだけは あなたのことも むかしのことも


忘れては いません  


何も 変わってはいませんよ




式子内親王様の住まわれた大炊御門殿は、有名な八重桜が植えられていた。

その花の盛りの時に、かつてこの御門の住人であった藤原良経に八重桜の一枝を添えて、歌とともに送った。


※大炊御門殿は本来ならば、式子内親王様が父後白河院からいただいたもの。

 それを、藤原兼実(良経)が後白河院から貸与してしまった。

 しかも、なかなか屋敷を式子内親王様に渡そうとせず、居座ってしまった。

 それでも建久二年(1197)、兼実が失脚し、御門殿から退去、式子内親王様はようやく、大炊御門殿に移り住むことが出来た。



この歌には様々な想いが込められている。

・春が来て見事な八重桜を安心して見る想い

・世の移り変わりへの複雑な想い

・弱い立場となった良経への思いやり

   

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