第53話みたらしや

みたらしや

     影絶えはつる

           心地して

               しがの波路に

                     袖ぞぬれにし


                           千載和歌集973


みたらし川の川面に映る私の影も


すでに消えてしまったような気持です


今は志賀の湖の波に祓いをする袖が濡れ


涙もあふれています。



※鴨の斎院退下後は、志賀の唐崎にて祓(はらえ)を行うしきたりがあった。

 また、「みたらし」は賀茂神社境内を流れる御手洗川のこと。

 禊ごとに、斎院の姿を映してきた。

 斎院の任を終えた内親王様は、琵琶湖の浪に袖を濡らすことによって、斎院から完全に解放される。

その一瞬に斎院時代の全てが消えてしまう寂しさを詠んだ歌なのだと思う。

おそらく詠んだ時期も、斎院退下の直後とされるので、21歳。


この歌も詠みかえすほどに、新鮮で力強い。


尚、「みたらし団子」は京都の賀茂神社が発祥地との伝承がある。

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