第50話玉の緒よ

玉の緒よ

    絶えなば

        絶えね

           ながらへば

                しのぶることの

                       よわりもぞする


                              新古今1034


こんな私の命など


絶えるのなら 絶えてしまえ


このまま いきながらえても


しのぶこころも よわってしまうのだから



※この「玉の緒よ」は、新古今撰五人が共撰し、当時から評価が高かった。


 忍ぶ恋は誰にも打ち明けることのない恋。

 浮名が洩れない先に、命そのものが絶えてもいいと思う心の深み。

 哀しいまでに激しく、孤独な魂の叫び声。


「た」の頭韻の畳みかけが激しい気持ちを表し、下の句の崩れる寸前の言葉を懸命に支える。

「絶ゆ」「ながらふ」「しのぶ」「よわる」全て、実体のない(程度を測りえない)歌語を組み合わせる。


様々、感じるところはあるけれど、確かに斬新にして、忍ぶ恋の歌を代表する名歌になる。


       

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