第43話恨むとも

恨むとも

    嘆くとも

        世の覚えぬに

              涙なれたる

                   袖の上かな


                        前小斎院百首


恨むこともあり


嘆くこともあるけれど


他の誰にも知られていない


この涙だけが 


袖の上に 慣れ親しんでいる



誰にも言えない苦しさを、その涙を、袖の上だけが知っている。

この歌はシンプルにして、本当に深い。

人には言えない苦しみを経験した人ならば、必ず心に沁みる歌だと思う。

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