第27話霜夜の星

身にしむは

     庭火の影も

          さえのぼる

               霜夜の星の

                    あけがたの空


                          正治初度百首


霜が降り寒さが身に染みる夜だった。


庭のかがり火の光のなか、夜明けの空に


星が、冴え冴えと星が昇っていく



 おそらく霜の降りるような寒い夜を徹して舞楽が明け方まで続いた。

 式子内親王様は、その興奮と余韻のうちに朝を迎え、かがり火の燃え上がる炎と、まさに冴え冴えと昇ってく煌めく星々に見入っている。


 この歌も冬の叙景歌。

 かがり火、神楽、星空、霜を踏むサクサクとした音、きらめく星空、身にしみいる寒さ、すべての要素を取りまとめ、華麗な歌に仕上げている。


 おそらく賀茂の斎院を務められた内親王様は、その場に臨んだと思われる。

 神楽の場面を詠んだ歌は、この一首だけが伝わっているとか。


※庭火

 神楽の奉納される庭に焚かれる、かがり火。


※神楽

 古来「神遊び」と称され、天照大神が岩戸に隠れた時の歌舞が起源と言われる。

 催しは、必ず夜。

 宮中他、伊勢、賀茂、石清水などの社頭でも催された。



 




 


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