第18話大原の里

日かずふる

     雪げにまさる

           すみがまの

                煙もさびし

                     大原の里


                           (新古690)


雪が何日も降り続いている。


その雪に負けないほど


すみがまの煙が多い。


大原の里は それほど寒く 寂しい。



※大原の里は、山城国の歌枕

 山深い土地でもあり、炭焼きで有名

 古くから京都の公家の別荘地で、遁世者の集団も住み着いている。

 また比叡山にも近く、宗教的な施設が多い。

 三千院、来迎院、浄蓮華院、勝林院、寂光院(建礼門院ゆかりの寺)等



 歌的に言えば、大原の雪とすみがまは、冬の寒さを表す用例であり、西行、源実朝にも、よく似た 歌があるが、式子内親王は降り続ける雪よりも、さらにすみがまの煙が勝るとした。

それほどに、「寒い。寂しい」ということを詠みたかったのかもしれない。


 尚、式子内親王は1159年生まれ、1201年没

 国母建礼門院徳子は、1155年生まれ、1213年没

 壇ノ浦で沈んだ安徳天皇を追い、入水するが、源氏方の武者に「熊手」で引き上げられ。その後捕縛、大原寂光院で安徳帝の菩提を弔い一生を過ごした。 

 おそらく既知の国母建礼門院の哀しい境遇に対する複雑な想いも、式子内親王の心にあったのだろうと、考えている。

 


 ※寂光院門前で、しば漬けをはじめとして。様々な漬物類が販売されており、誠に美味。


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