俺と妹

 家に帰ってきたがどうしよう。

 今度は俺が波留に質問攻めにされてる。

「お兄ちゃん、この傷は何? いじめでもされてるの? それとも喧嘩? お兄ちゃんにはそんなことができるわけないか」

 男としてのプライドがさりげなく傷つけられた。ガラスのハートみたいに繊細なのに。

「そのまさかの喧嘩だ。俺がいじめられるわけがないだろ。もしそんなことをしたら先生にちくる。この学校の先生は優しい人が多いからな。過保護すぎるときもあるけど」

「お兄ちゃんにもそんなことができるとは思わなかったな。あの喧嘩ができないお兄ちゃんがどうしてしまったの、可愛かったのに」

 う、うるさいやい、一時期、女子にカワイイカワイイって言われて大変だったんだから。まあ、キモイと言われるよりは全然いいけど、あの女子の目は同性を見る目つきだたよ。少しへこんだから。カワイイという自分がカワイイでしょ、みたいな感じでもなかったんだよな。それで俺はよりへこんだ。本気だったんだ……という意味で。

 あと、ちくるという話を聞かないふりには驚いたわ。渾身の痛い話だったのに。

「救急箱とかないか? ちょっと口元が切れて菌が入ったら困るから消毒をしておきたいんだが」

「アニメの見すぎじゃない? 妹に消毒してほしいの? 痛い人だ」

「ああ、俺はあちこちが痛い人だ。ずきずき痛むんだよな」

 それからの波留の行動は俺が見ていて実に面白かった。

 一瞬、怒りマークが出てくるぐらいの顔をした後、どこ吹く風みたいな顔に戻り、最後には諦めたような呆れたような顔をした。

 それでも消毒はしっかりしてくれるんだから優しい妹だとしみじみ思ってしまう。

 俺がこれ以上あまり話したくないと内心で思っていることが届いたかどうかは分からないが、その話は出てこなかった。

 もし、察しての行動だったら感謝感激だわ。


 その後、親にこの顔を見られ、本気で心配された。

 山姥も心の中は人の子だったということだね。

 俺が見ていたものは氷山の一角だけだったんだ。

 なんだかんだずれている家族だと思うけど、やっぱ優しい。

 養われる俺は客観的に見て悲しい。

 ……よし寝るか。

 そう決断した俺はチーターよりも早く寝床に着いた。

 本気になった俺を止めれるやつは世界中を探したって一人も見つかりやしねえぜ。

 けっこう本気で厨二病に向かっているなと思います。

 せめて夢の中では幸せでいさせてほしい。

 それが偽物であったとしても……

 このセリフって結構使われているよね。

 使い古しのかっこいい言葉ほどかっこわるいものはない。

 矛盾だわ。

 眠い。

 よし、俺の必殺技発動。とあるアニメの主人公の約一秒で眠りにつく、だ。

 現実はそうもいかなく、眠いくせに目は冴え、それから体感時間で1時間ほど睡魔と格闘した。

 さっさと負けたかったんだけどな。

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