生徒会にあの有名人が

 「ま、待ってあたしもいます」

 残念、後ろにはだれもいなかった。

「ここは、関係者以外立ち入り禁止だから、後からにしてくれないかな」

 そして彼女は、乱れた服装を少し直していった。

「あたしは舞染由紀まいぞめゆき、アイドルです……あっ、いうこと間違った」

「『……あ、アイドル!?』」

 叫びながら、俺は思ってしまった。……超高校級のアイドルかと。


「改めて私は舞染由紀、副会長です」

 舞染は明らかに染めたであろう青い髪をしていた。ハーフや外国人でなければだが。

 顔はさすがアイドルというべきか端正な顔作りをしていた。しかし、黒雪とは違って体はよく言えばスリム、悪く言えば貧相だった。これは言い過ぎか。

「しかし、そんな話は聞いていないんだけど」

「先生が驚くのも無理ないです。だってあたし校長に秘密にしてもらっていましたから」

「なんで?」

「だって~、みんなあたしに言い寄ってくると思ったんです」

 さっそくアイドルの隠された性格に気づいてしまった。最初は天然かと思ったのに……ひょっとしてあれも演技? だとしたらホラーものだな。

 こいつは腹黒いな、アイドルってみんなこんなものなのか? いや違うはず。

 アニメのアイドルは清純な人ばかりなのに。アイドルのアニメ見ないけどね。もう卒業したから。入学もしていないはず。

 しかし、職業って怖い。人の見方が変わってしまう。これで警察の恰好をしていたら、警察って信じちゃうわ。やだ、タイホされちゃう。

「というか、本当にアイドルなのか」

「ええそうよ。夢物語っていうグループのセンターを務めているわ。それと雑誌のスクガールの専属モデルもしているわ」

 全くもってわからん。男子だし当たり前だな。逆に知ってる方が怖い。

「唯月知ってるか?」

「名前ぐらいは」

 和葉も知らないか。じゃあ、黒雪は知らなさそうだし、先生もそこまで若くないしな。

「先生は知っているよ。去年までよく見てたわ。でもあなたのことは知らないな」

 先生、若さアピール必要ないです。周りを見てください。和葉は苦笑いをしています。黒雪に至っては首を横に曲げて、意味不明っていう顔をしています。

「半年前になったんですから当たり前です」

「ううん、あなたのことはよくわかった。少しめんどくさいね」

 ちょっと考え込んだ後に俺の言葉を代わりにいってくれた先生ナイス、そんなことを言うとはさすがに思ってもいなかった。ここで言う理由が分からないけど。ついでに言うと、いつもめんどくさいこと考えているから俺の心を読まれたのかなと思いました。だとしたらホラーものだな。女性は怖い怖い。男性は単純単純。騙されるなよ男たち。

「あの、話を戻してもいいですか」

「ああごめんね、それであなたたちはこれからのことが何もかも初めてなわけなんだけど、何かやってみたいことがあるかな」

 いきなり過ぎない?

 何もかも初めてな人に聞かないでしょ。その前にまず、この一年大体何やるかとか目先の仕事が先だよな。そういうことは余裕が出てきてから言ってほしいです。

「先にやることありませんか?」

「うん、私もそうだと思う」

「では、依頼を受けるというのはどうでしょう」

 はい軽く無視しましたね。黒雪さん。

 それと思いつくの早くないか、まるで電卓だな。

 しかし、依頼を受けるのか。意見としては悪くはない。だが、いかんせん全校生徒の人数が少なすぎて、依頼なんて来ないのではないんだろうか。俺の中学校では、目安箱かなんかが置いてあったけど、あれに実際に紙を入れている人なんて見たことが無かった。この高校より人数が多い所でさえそうなんだから、都市部の学校でもない学校でそんなことをやっても実際に依頼する人なんて年に1、2回いるかどうかだと思うんだが。

 そこらへんの所を会計長さんはしっかり考えているのだろうか。考えていないのだとしたら、その一人二人のためにそんなことをするのもめんどくさいし、はっきり言って断りたいんだが。ついでにこの会長自体も断りたい。家帰ってアニメ見てぇー。

「それはいい意見だね、しかし具体的にはどうするの」

「生徒玄関に箱を設置して、そこに依頼を書いた紙を入れてもらいましょう」

「なるほど、じゃあそうしようか、反対意見はないね。よし決まり」

 間が無かったので、俺たち何も言えませんでしたが。心の中では散々言っていたのに。心の中の声を聞かれていても嫌だけどね。

「名前はどうする。依頼箱か?」

「いえ、舞桜箱まいざくらばこにしようと思います」

「どうしてそうしたの」

 確かにその通りだ、言いづらいし。

「意味はですね数えきれないほどの、悩みを解決してあげたいからです」

 なるほど、悩みを桜に見立て、そんな悩みで散ってほしくないからということか。この子優しい。

 いや名前じゃなくて、ここで反論しないとこのまま決定だから。

「ちょっと待ってください。この依頼箱を設置したからといって実際に依頼をする人なんているんですか。それとその前に一年を通してのスケジュールとか、主な仕事とかを教えてほしいです」

 原先生は、俺の発言に対してしばらく考えていたようだったが、窓を見て、また考え、なにかを決めたようだった

「相原くんの言うことももっともだけど、あまり焦る話でもないし、もうこんな時間だから今日はもう解散にして明日また話し合うことにしようか」

 時計を見るといつのまにかもう7時を過ぎていた。時間進むのさすがに早くない? 何かした感じが全くないんだが。タイムマシーンにでものっちゃたのかしら? 

時計が狂っているのかと思い窓を見ると、日はとっくに暮れ田舎らしく澄んだ空に、数多の星と半月が輝きを放っていた。

 まあ、月とかは太陽の光を受けているだけで輝きを放ってはいないけど。でもこういうところが田舎の数少ないメリットだな。都会に行ったら星なんて見えないだろうし。

 それは置いといて、ようやく帰れる。帰ったらアニメを見て、一応勉強もして夕食食べ、ふろに入って寝よう。今日いろいろあったけど精神的に大丈夫じゃないから休息をしっかり取ろう。

 そう思ってさっそく帰ろうとしたら肩をつつかれたので本能で後ろを向いたら、

「相原くんはもう少し残ってね」

 先生は僕を寝さしてくれないんですか。

 あれ、ちょっといやらしい。

「先生、なぜ俺だけなんですか」

「文句はいわない。きみの今後についてだから」

 なんか、俺やらかしたか。

 いや、俺は普段そんな人とも関わらないし、勉強したらすぐに帰るしな。

 いろいろ思い返してみたら、俺って可哀想なのか。

俺の青春は何処へ行ってしまったんだ。

そしていつの間にか生徒会のメンバーは行ってしまった。

やはり俺は恋愛ができないのか、そうなのか。知っていたけどね。

 俺が何年生きてると思っているんだ。そんなことぐらい知っているよ。

 結論、俺は可哀想な人。自分で考えて、悲しい気持ちです。

 引き留めた割になんか迷ってる様子だった原先生が覚悟を決めたのか口を開いた。

「あのさ、あんなキャラの濃いメンバーだらけで大丈夫?」

 いいえ全然。……っく現実というダメージを受けてしまった。いかん平常心平常心。頑張れ俺。話がややこしくなるからお前は大丈夫ですと言い、帰ればいいんだ。

きずぐすりを使って、優紀は20HP回復した。レベル1だからこれで十分。

ええと、確かに真面目な幼馴染に、無口だと思ったら喋るふしぎな女子に、腹黒いアイドル、ついでに俺に仕事を任してくるおばさんのようなお姉さんもいるもんなあ。

 あれ、後半になるにつれて俺に悪影響を与えていないか。

 つまり、俺の真の敵はあなただ。原恵。俺はこの謎を解く、じっちゃんの名に懸けて。

 あ、もう謎といていたわ。経験値を1手に入れた。優紀はレベル2になった。

「確かになかなか心配ですね」

 さりげなく先生をちらっと見る。

 ちなみにこれアホなこと考えてる自分も入ってる。将来が心配でたまんない。夜も焦って眠れない。これホントだから、最近寝不足だもん。

「ん、どうしたの。私の顔になんかついているかな?」

 やはり気付かないか、作戦A失敗。

 だからといって作戦Bはないけど。

「いえ、別に」

「そう?えーなんだったけ、あ、それでどうする」

 いきなりどうするっていわれてもな、俺は電卓じゃねえし。

「とりあえず現状維持でいいんじゃないですか」

「わかった、帰っていいよ」

 あっさりしてんな。塩ラーメンと比べてもこってり度で塩ラーメンが勝ってるよ。

あれ、予想より1時間近く早く終わったぞ。

 でもまあ、帰れっていうなら俺は帰る。残業は絶対しない。それが俺のポリシーだ。残業手当なんぞ俺は要らん。ふっ。

「先生、帰るついでに鍵返しときますよ」

「じゃあお願いするよ」

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