変わる俺の日常の始まり

そして迎えた、といっても学校祭じゃないけどただの生徒会の初の顔合わせだけど。

 人数は少なく校舎は小さいのになぜか無駄に長い廊下を歩きながら、生徒会のメンバーを考えた。

 すぐに分かったことがある。

 クラスの人たち半数以上知らねえー

 無心になって歩いて生徒会室まであと少しというところで、生徒会室の前で入ろうか入らないかで行ったり来たりしている人物が見えた。

 こいつもしかして……

「おい、お前唯月か」

 和葉は、こっちを向いて

「なんだ、優紀君か」

「反応薄いな」

「だって私、あなたが会長だってこと知ってたから」

「そうか、知らないのは俺だけか」

 俺だけ仲間はずれですかそうですか。クラスでもそうだけど。

「なんで黙っていたんだ、教えてくれてもよかったじゃないか」

「原先生が、黙っておけって」

 ふうん、あの先生か。

 今ごろ、どこかでほくそ笑んでる教師を恨んでやりたい。

「それより、なんで生徒会室入らないんだ」

「二組の、黒雪さんがいたから」

その人誰だ?

黒雪美羽くろゆきみゆさんだよ、人の名前ぐらい覚えとかないと」

 と、俺の表情で分かったのか言ってくれた。

「お前も話したことないのか」

「うん、まあちょっとね」

 意外だな、和葉はコミュニケーション力高いし、話したことがあると思ったが。あと言葉の濁し方が女性らしい。そう言われると何かあったのか大変気になる。でも聞いても話をはぐらかされるか、怒るかのどっちかだな。和葉の性格から、多分前者だと思うけど。

「まあとにかく中に入るぞ」

「ちょっと待って」ガラガラ

「人の話を聞け」

 俺は、その言葉に耳を傾けずただただボーっとしていた。

 生徒会室に入ったとき、窓は開いていないのに風がいきなり吹いてきたような感覚がした。

黒雪は、髪が真っ黒のロングで艶やか、目は大きくその中には引き込まれてしまいそうな漆黒の瞳、鼻は小さく整っていて、透明感があり日焼けの跡が一切ない白い肌、奥の陽と相まってとにかく綺麗だった。

「あなたの名前は…」

 すでに知っている名前をなぜか聞いてしまった。

「私は黒雪美羽、会計長です。あなたは?」

「……ああ、俺は会長の相原優紀です」

「私もです。えーと私は唯月和葉です」

 名前でえーとはないんじゃないか。俺もやったことあるけど。なんか緊張するとやっちゃうよな。いや別にもね。

「ああ、みんな来たんだね」

 いきなり誰だと思ったが、原先生だった。

「……これだけですか」

「うん、そうだけど、異論は認めないから」

「さっそく自己紹介から始めるよ」

 言う必要あるのか。

「えーと、俺は相原優紀です。会長を務めます」

 うん、最初はこんなもんだな。結局えーと。

「私は、唯月和葉です。書記長を務めます。行事の仕事はもちろんのこと普段の仕事も手を抜かずに真剣にやってこうと思います。よろしくお願いします」

 うわ、結構真面目にあいさつしたよ。だから最初は嫌なんだよ、ほんとどうして出席番号1番って嫌な目にあうんだ。

 例えば実技のテストで歌は最初に歌うからろくに練習もできず、結局評価は悪いし、卒業式で三礼はするし、誰かが休んだら俺に全部任せるし。もうここまでくると、出席番号のせいなのか、ただ単に先生に嫌われているのか分かんないよな。

 そんなことを思っていたら、和葉がこっちを向き、ドヤ顔をしてきた。

 もちろん無視したが。

「ちょっと無視しないでよ」

 さらに無視。

「私は黒雪美羽、会計長です」

 何もひねんないな。

「そして私が、担当の原恵です。他の高校とは違うし人数も少ないけど頑張ってね。他の生徒たちにも少しは手伝ってもらうから」

 そうしたらいきなり扉がバンと開いて、青髪の女子が出てきた。いいタイミングだな。ヒーローか。これからあと四人出てきて、変身! とかいっちゃうのかな。ちょっとわくわく。

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