俺の普通の日常は手の届かないところへ
キーンコーンカーンコーン
「はっ、やばっ寝過ぎた」
思いっきり焦っていると、前からまだ二十歳前半ぐらいの女性教師である原先生が(そのときは、無理に笑顔になっていたせいで、三十、四十に見えたが)歩いてきた。
「やあ相原くん、今日は疲れていたみたいだったね」
「そっそうなんですよ、朝から大変な目にあって」
「そうか~でも若いからもっと大変な目に遭わないといけないね、ということで生徒会長よろしく」
ほんと、すごい笑顔なこと。
「なんですかそのこじつけ理論。まるで俺じゃないですか。あとさすがに生徒会長は……。 っえ、ええ!」
思わず立ち上がってしまった。これは居眠りした代わりに仕事を押し付けられるギブアンドテイクのレベルじゃないから。こいつ何考えてんの。全校生徒の前に出てあいさつしろというの?トップに立てというの?居眠りしている人間を?人数少ないのにこいつ誰とか思われて終了だから。家で大号泣だぞ。不登校になっちまうぞ。
まあいいや、どうせ不信任だろ。うんうん……待てよ、いいや違うな。そもそもみんな会長になんて大した興味を持っていないはずだ。そうしたら、誰でもいいと思っているから、信任になると。おお、当選めでたしだ。ふざけるんじゃないよ!
どうしようか。ひどい演説でも見せようか。あっ、不信任になっても家で大号泣だ。これ無理ゲーだ。もう詰んだわ。しくしく。
「頑張ってね、この学校に二年生はいるけど、誰もやんなくて、先生方で頑張って成績とかで釣ろうとしたのに誰も乗んなくて、仕方ないから先生方の方で何とかして一年終わったの。で、今年こそはと思ってみんなに聞いたけどこっちもあっちのクラスもやらないらしくだれも手を挙げないから一人ひとりに聞いたの、そうしたら否定しない人がいたから、肯定ととって任したの。ちなみに選挙もないからよかったね。不信任にならない」
成績で釣るような先生はいいのでしょうか。頑張る方法おかしくありませんかね。このバカチンがとか、いつやるの、今でしょとか言ってもいいからしっかりした先生になってください。
今のご時世、熱血な先生って嫌われるらしいな。本当の熱血だったら意外と嫌いじゃないんだけどな。時代は変わっていくんだな。それに乗れない俺は置いていかれるんだな。
ん、よく考えたらこの人、俺が寝ていることを知っていて聞いたんだな。あと不信任前提を止めて。俺も最初してたけど。
しかし今までで一番いい笑顔をいきなりしていたせいで思わず惚れるところだったよ。
「じゃなくて、俺には務まりませんよ」
「何がじゃなくてかわからないけど、相原くんは周りに陰で真面目だと思われているんだよ。まあ授業態度は私の時だけ酷いらしいけど、成績はいいからね」
普段、ほとんどの人と話していないから知らなかった。みんな意外とちょろいのね。しかし諸君、真面目は孤高の存在なんだぞ。学校は友達と話すところじゃなく勉強する場所と考え、自分の目標のために勉強をする人間なんだぞ。
これって、客観的に見ると十人に俺は真面目ですかと聞いたら十人が真面目だと答えるね。そんなことを自分で聞くやつはもう真面目じゃないけど。それに今日、勉強時間に寝てたわ。これじゃ真面目じゃなくてヤンキーだね。仲間いないからチンピラでもない。孤独のヤンキー、略してこどヤン。それはそれでなんかカッコイイと思ったけど戻したら子供のヤンキーみたいだから正式名称に直そう。まず正式ですらないが。
そんなことはどうでもいいんだが、生徒会のメンバーはもちろん俺一人じゃないよな。
「第一、副会長とかはどうするんですか」
「そっちの方は心配しなくていいよ、そっちはいたから」
よかった。フラグ立てたからいないかと思った。天もそこまで俺に酷いわけじゃないんだね。いつもぼっちにさせるから俺が嫌いなのかと思った。
「誰なんですか?」
「まあ、それは後からのお・た・の・し・み」
すごい可愛くて危なく付き合うところだった。でも年の差はなれているから無理です。あれ、原先生結婚してたっけ? どうだっけ? 今聞く雰囲気じゃないし今度聞こう。先延ばししちゃうと忘れちゃうよね。ということで多分聞かないで高校生活終わりそうです。
「放課後に生徒会室集合だからね」
俺は、わかりましたとだけ言って、背を向けて行ってしまう先生を尻目に、あることを一人で考えていた。
なんで俺寝ちゃったのかな……
その後、俺は訳も分からん緊張に包まれて授業にも全然集中できなかった。
具体的に言うと、先生に当てられたら、ふぇとか言って周りにちょっと白い目で見られた。救いだったのが、ほぼ男子だったこと。女子の白い眼とかガチで怖いから気をつけた方がいい。メデューサに見られたような感じで心が石化するから。
ついでに昼食はもちろん一人で食べた。こんなこと誰にも言えない。今後、数少ない友達と喋っても笑い話にならない。されるとしても苦笑いか嘲笑。笑いって時に人を悲しくさせるんだよね。リア充はこれを知らない。いいことづくめだな。よく非リアがリア充爆発しろとか言う理由が分かった。本に出てくる男女がイチャイチャしててもニヤニヤしちゃうだけなのに、なんで現実だと少し腹が立つのだろうか? いや訂正する。
なぜ糞腹立つのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます