終わりを告げる俺の普通の日常
駅に着くと同時に学校まで、置いておいたチャリで寒空の中、全速力で漕いだ。
というのも、駅から学校までがかなり遠く、他の市から来る人は、大抵駅に自転車を置いている。雪が降り始めたら、一体どうなるのだろう。
北海道の春はかなり遅く、暖かくない。といっても近年は本当にここは冷帯かというほど寒くはないがそれでもたかが知れている。しかし、今、幼稚園児の子供たちが中学生になったときには温帯になっているかもしれない。よくありますよね、昔、そうだと思っていたことが、今では変わっていることって。例えば、昔は石油があと20年しかもたないはずだったのに、今ではあと50年もつということとか。どうやら、現代では昔より奥深くまで取れるようになったから増えたらしいけど。そう考えたら、また科学が進歩して、未来では、あと100年もちますって書いているかもしれないな。科学って素晴らしい。これからも頑張って科学者さん、応援だけしてる。
まあとにかく、こんな寒い田舎というか、俺にとって一つだけあたたかいニュースがあった。それは少し前に話題になった高校に進学できたことだ。
俺が通っている学校は、去年創設され年々人が減っているこの日本で、しかも北海道の田舎の田舎の田舎で作られた、ちょっとしたニュースになっているほど珍しい高校だ。ここまで田舎だと逆に観光地だな。みんな来てね。赤字だらけのこの町が潤いますように。ここらへんの場所ならどこも似たようなものだろうけど。
こんなところに、高校を作ったやつはバカだと思う。近場に有名な観光地なんて皆無だし。食べ物方面だって、昆布が入っている飲み物だったり、野菜や海産物がドロドロの液体の中に入っているような食べ物しかないぞ。ちょっと悪口が過ぎただろうか。すんごい美味しいよ。俺の中ではB級グルメだから。A級なんかより安くていい。庶民の味方だ、ありがとう。俺も高校を作ったやつも、どちらもうつけ者だな。
しかし、ここに高校を作った人に感謝もしている。校舎が新しいから。
でも、人数が少なくて、校舎はさすがに都会の高校と比べると小さい。と言っても1階から3階までそれぞれ1年、2年、3年と教室があるが、3階は大した使われていないからどうなっているか分からないが、十中八九、1、2階と同じだろう。
人数が少ないのでクラスは普通科2クラス、理数科1クラスしかない。普通科の教室は生徒玄関の右側にあり、理数科は左側にある。俺のクラスは理数科の奥側にある。
俺のコミュニケーション能力の低さのせいで友達は数人しかいない。普通科には一人もいない。
しかし、俺の趣味はアニメ鑑賞や読書などの一人で出来るものだからこれぐらいで充分だと思っている…全然悲しくなんてないんだからね。
オラ、東京の秋葉原さ行ってくるだ。人混みが嫌いだけど、背に腹は代えられん。俺突撃~。―はあ、本当に行きたい。
そんな学校にぎりぎり間に合って、ホームルームが終わり、休み時間に入ると、隣の男子が、まじかったり―わ、と一言。
「はぁー、朝から散々な目にあった」
俺も負けじと、一言。ついでに、俺の横を通りかかった人物に聞こえるように少しだけ声を大きくして。
「どうしたの、朝からため息なんてついて」
思惑通り、あからさまに呆れた感じでそう言ってきた。呆れた顔は止めてほしかったけど。
彼女は、唯月和葉、俺の中学校からの幼馴染だ。
髪は茶髪でロングポニーテール。目はパッチリ二重。体系はボンと胸も尻も強調しているわけではないが、……まあスリムな体型だ。客観的に見ると、かなり可愛い。主観的に見たら超絶可愛い。まあ、ただ幼馴染だから、ずっとそう見ていると、なんだか気まずいんだよな。個人的に。
性格はしっかり者で、困ったときによく助けてくれる。
「聞いてくれよ、朝食は朝から野菜しかない、自転車で人とぶつかって、その人はおかまだったとかで大変だった。今までで一番だ。うん間違いない」
「それはまあ、あれだね、いつか幸せが来るよ。うんきっと……はぁー」
間違いなくさらに呆れているな。
「なぐさめてくれて嬉しいけど最後のは何なんだ。頼むからやめてくれ、自分が哀れだから」
「大丈夫だよ、大丈夫」
言葉だけじゃ嬉しいけど顔が哀れなもの見てるような顔だからやめて、立ち直れなくなる。
「これ以上話すと、俺がさらにダメージうける」
「そうだ、今日転校生くるらしいよ。これ先生も知らない情報だから」
ちょっと強引に話を変えられた。元々終わりそうな話題だったからいいんだが。
「それをなぜ知ってる」
そう言ったら、いきなり和葉が口に人差し指を付け、
「ひみつ」
なんてことを言ってきた。本人にそんな気持ちはないかもしれないが、俺から言わせてみれば、あざといけどかわいい。
「まあとにかく頑張って。一応幸せになるよう願っておくから」
そのまま和葉は、俺の三つ前の席に座った。
俺は今日の朝のせいでだるくなってきたから、ちょっと寝てから授業を受けるかと考えていたら、後ろから嫌な声が 耳に入ってきてしまった。
「やあ、二次元の優紀君じゃないか」
「そのわざとらしいセリフ、お前のそういうところやめろ。てか俺の前にいることをやめろ。いなくなるときは三途の川を渡っていなくなれ」
こいつは沢中潤、顔はいいせいでまわりの女子からちやほやされるが、中身はクズ人間だ。断言する。俺はかかわりたくないのに、こいつがかかわってくるせいでまわりからは友達と思われているらしい。
これは、俺のただ一人の男友達である人物から聞いた。ちなみに唯月はただ一人の女友達。
小学生の時、ともだちひゃくにんできるかな、って歌っていたけど、小学生の時が友達多いピークだったな。それでも十何人だったけど。あれからみるみるうちに減っていき、今となっては片手で数えても余りがあるほどに減ってしまった。というか二人のみ。今の自分を過去の自分に見せたくない。それに比べてこいつは、ともだちひゃくにんいそうだな。でもこいつのことだから持ち前のコミュニケーション能力を使って、他校の人とも友達になってせんにんいじょういくんじゃないか?
どうでもいいや。俺が思うことは一つだけ。ただただ憎むこと。
「見るからに嫌そうな顔こそやめてくれないかなぁーフフフ」
なんでこいつ俺と話すとき異常にニヤニヤすんの。あっ目ヤニ付いてる。珍しいな、寝坊したのか? でも言わない。こいつを恥ずかしい目に遭わせるのが将来の夢だから。決してちっぽけではない。
「おお、よくわかったな、嫌だから去れ」
「そんなこと言わなくていいからさ~僕と君の仲じゃないか」
「何が僕と君の仲だ。心にも思っていないことをあたかも本当のようにペチャクチャしゃべりやがって。嘘つくなって親に言われなかったか」
みんな嘘つくのはやめようね。親とかにばれるとお小遣いさようならーだから。ソースは幼き日のぼくちん。俺ってばネット依存症だってばよ。ホントだよ。これはこれで親が怒るな。八方ふさがりだよ。
それにしてもなんで、こいつ関わってくるんだ?
友達のいない人に僕優しくしてあげていますよアピールかよ。
自分の株価上げまくってるな。そのうち学校恐慌起きて、俺はブロックするな。そして戦争が起きる。
「もうそろそろ僕行かなきゃ。あっちのほうで僕を呼んでいる声がするからね。友達の」
倒置法使って友達を強調すんな。友達は量より質なんだよ。ってか、お前は早く逝っちまえ。
俺は、そう毒づきながらうつ伏せになった。教室の後ろのほうから聞こえる黄色い声援を軽く無視しながら。
でも、こそこそ笑っている声も聞こえる。将来の夢達成。目標が無くなってしまった。あっ。次の目標はあいつを破滅に追い込むことにしよ。卑屈だな。でも俺をこんな風にした親は山姥です。人を殺さないだけまだマシだから許して。
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