俺達が作るフリースクール

半月

俺の普通の日常

俺の悪夢の始まり

「うーん……はっ!」

 起きると全身、かなりの量の寝汗をかいてしまった。

 しかし、こんなに汗が出るような夢を見た覚えはないんだがな。あまりに嫌なことだったから頭が無理やり排除しようとしたのか? 駄目だ、どんな夢だったか全く思いだせない。ただ思い出そうとすると不快な気分になってくる。

 これ以上考えても思い出せそうにないから諦めよう。

 布団から出ると、春であるはずなのにぽかぽかはしていなく、最近の気候変動のせいか薄ら寒く感じた。一人でいるせいかなぜか心もぽかぽかしない。料理でもしたら気持ちが分かるだろうか。

「優紀、朝ご飯できたわよ」

 一人でそんなしょうもないボケをしてたら、階下から母の声が聞こえてきた。

「はいはい、今行く」

 大きな伸びをしてから着替えだけ済ませ、俺は高校に行く準備をするため部屋から出た。

 階段を降りながら今日の朝ごはんはご飯よりパンの方がいいなどと考えリビングを見る。

「なんじゃこりゃ」

「ああ、近所の人からたくさんもらったのよ」

 そんなことを言っても、さすがにこれはひどいだろうが。

 テーブルを覆いつくすようにあるものは、野菜、野菜、野菜でおかずどころかごはんまでない。

 サラダ、浅漬け、またサラダ。レパートリーは少ない。ちょっとでもいいから工夫して。

「もう少しどうにかならない。母さん」

「たまには我慢しなさい」

 多分俺我慢してる方だよお母さん。

 例えばこの前、買い物してる最中になんとかキュアショー見てキャーとか言って興奮してて、一緒にいて周りから冷たい視線を浴びせられ魔法で凍っちゃうということがあったから。

 基本常識人なのになぜたまにおかしなことするのか。もうあなたはアラフォー越えてアラフィフに向かってる最中なのに。

 でもさすがにプリなんとかショーとは違い黙って、はいそうですかとは言えないな。そんな優しくないから。

「こればかりは無理、野菜嫌いには耐えられない。もう準備して行くよ」

「少しだけでもいいから食べていきなさい。そんなんだからいつまでもひょろひょろした体つきなのよ」

それから俺は少しムカつきながら母と話しているうちに段々と感情が高ぶってしまい、そのせいで時間を忘れて口論に発展してしまった。

 母さんったら全く人の話に耳を傾けないし、どうにかなんないかな。

 こんなことを考えれるなら意外と冷静ですね。

 そう思いながら時計を見ると、

「やばっ、遅刻する」

 俺は、急いで家を出た。話過ぎた。後ろから感情が高ぶった山姥が追いかけてきたがさすがに無視。しかし、意外と速い。火事場の馬鹿力なのか? 歯、磨き忘れた。さすがに臭いだろ。でもどうしようもない。後で口をゆすぐだけゆすごう。

 全力で走った後もう少しで駅に着くところで、

「よし、遅刻しないでぐわぁー」

 いきなりコーナーから来た人とぶつかってしまった。

声が雑魚キャラみたいだった。実際そんなポジションにいるんだが。

「いってー」

 これが、ラブコメ展開なら美少女なんだろうと思って相手の顔を見た。

 それともこれから降ってくるのかもしれないな。

間違いなく違うだろうな。特にそこまで求めてもいないから別にいいんだが。

少しは求めたいけど。

「……これは結構なことで」

 相手は四十過ぎの男、しかも顔には化粧も付いていてまぎれもないオカマであった。美化するとニューハーフ。美化しているのか? しかしこれは、さすがに予定外だった。すごい関わりたくない。もしかしたらと思い、後ろを見ると、さすがに諦めたのか顔は見えなくなっていた。これにてひとまず安心。……できるか~。

「大丈夫~お兄ちゃん。もしあれだったら病院連れて行ってあげましょうか~」

「いえ、全然大丈夫です。本当にお気になさらず」

 このおじさんなんかもじもじしながら言ってきたよ。オカマ独特のオネエ語で。この言語がわかるってことは、俺ももしかして、オ・カ・マ? 嫌だ―。精神的に弱い人は、今のでノックアウト。吐いてたな。ダブルの意味で。

 朝から大変な目に遭いながら、大急ぎで駅に向かおうと走った。

「ちょっと待ってよ~」

 お前まで来んなよ。山姥といい、オカマといい、このまま妖怪オンパレードになっちゃうのか? 

 オカマは妖怪ではないけど。でもそうにしか見えない。

 全国のニューハーフの皆さんごめんなさい。でも聞いてください。

 あなたは後ろから汗でメイクがとれかけてるおっさんが走ってきたらどう思いますか。一般人はこう思います。さすがにキモイと。でも決して差別じゃないよ。もし俺がメイクをして、しかも取れかけていたら皆さんよりもっとキモイと思うので。

 そんなこんなで、駅に来たので、急いで年間乗車券を使い、電車に駆け込み乗車した。よい子のみんなはキケンなのでぜったいにやめてね。

俺の行く学校まではすぐだ。といっても、ここは北海道だから近く感じるのであって、東京目線では遠いのかもしれない。

 疲れたので、ハゲている無愛想なおっさんの横で寝た。最近気になっていることがあるんだが、女子の間でおっさんカワイイ。とか言っているらしいけど、全然わけわからん。隣からは、加齢臭が漂ってくるんだが。老いたら俺もこうなるのか。だったらあまり言わないでおこう。もし子供ができたら同じことを言われるだけだろうから。でもでも俺がおっさんになったら加齢臭が臭わない香水かなにかが売っているはず。もしかしたらすでにあるのかも。だったら女子高生に紛れて男子高生も、あのおっさんカワイクね。やっぱマジそう思う? だよね。マジうけるわ、とか言うかもね。何がうけるんだ。言葉はしっかり考えてから言え。というかおっさん人気度半端ネエ。

話題の渦中にいたおっさんは気付いたらいなくなっており、代わりに紙をアップで留めた美人なお姉さんがいた。

 やっぱそうですよね。時代はおっさんじゃなくてお姉さんに決まっているでしょ。

 誰だ、おっさんブームとか言ったの。男子高生がそんなのにハマる訳がないでしょ。

間違ってもオネエさんもないから、そこ勘違いしないように。オネエさんはオネエさん同士で仲良くやっていてください。オネエさんブームはさすがに困ります。トラウマがあるので……。

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