叫ぶ。挫折したキャベツの破滅。
いましん
叫ぶ。挫折したキャベツの破滅。
「あーーー。」
キャベ太郎は唸った。レタス子へなかなか告白出来ないからだ。ちなみに駄菓子のキャベツさん太郎とは関係ない。
「知ってるんだ、俺だって。モテ要素なんて一つもない。顔も良くないし勉強も出来ないし運動だって出来やしない。歌が上手いとかがあればまだ良いんだろうけどそれもないし。どうせレタス子に告白したところで、フラれて終わりなんだ。」
当然だが、キャベツに顔は無いし脳も無い。肉体も声帯も無い。だからそんな悩みを持つ必要は全く無いのだが、そんな事を言ってはいけない。書く事が無くなる。
脳が無いのに考えたり声帯が無いのに喋っているのにも気にしてはいけない。そういう世界観なのだ。
「こんなんじゃレタス子に釣り合わないよ……」
先ほどの条件はレタスにとっても同じ事なのだが、キャベ太郎は気付いていない。要はアホなのである。きっと。
「でも、物は試しだ。当たって砕けろ。フラれたらフラれたで良いじゃないか。」
「ごめんなさい。」
「フラれたーーーー!」
叫んだ。キャベ太郎は叫んだ。喉が張り裂けんばかりに。いや喉なんて無いんですがねヨホホホーとばかりに叫んだ。
「駄目だ……死ぬしかない……」
家に帰ってきて落ち込むキャベ太郎。ここでいう家とは農場のことで、死ぬというのは豊作すぎた年に重機で踏み潰していくアレの事だが、そんな事はどうでもいい。キャベ太郎は落ち込んだ。
「こうなったら……株でもやって、1発当ててやるか!」
キャベ太郎が言っているカブというのは、アブラナ科アブラナ属の蕪では無く、株式会社の方のカブである。少し思考回路が謎だが、もっと謎い事は沢山あるだろう。作者の頭とか。
ともかく、キャベ太郎は株をやることにした。正直な所、彼もパソコンの画面に向かうまで、正確に言えば少しポチポチした後にググって初めて、カブが蕪で無く株である事を知った。
「何か適当にやってみたけど、どれくらい儲かっているんだろうか。」
ふと気になって、というかふと気になる物では無いのだが、キャベ太郎はふと気になった。急いで電話を掛け、農場で1番賢いゴボウ、では無く蕪を呼んだ。ゴボウはいつも土で汚れているから嫌だと思ったのと、カブのことはやはりカブに任せるべきだと思ったからだ。全く意味が分からない。
「おい、これ……有り金全部無くなってるぞ。」
奇跡的に株をきちんと理解していた蕪は、貯金が1円も無くなっている事を告げた。関係ないが、無と蕪の文字がとても紛らわしくて読みにくいと思う。何故ここまで読んでいるんだ。もっと有意義な事に時間を使いなさい。書いている作者にも言ってやれ。
「マヂでか……もゥムリぃ……」
思わず中途半端な一昔前のギャル見たいな口調になるキャベ太郎。そこはFXで有り金全部溶かす人の顔という有名なネタがあるのだが、敢えてしない。キャベ太郎の最後の意地である。
「叫べ。」
蕪が突然言った。
「え、何で」
「タイトルを見ろ。何となく語呂というか韻だけで小説は書けるのかをやろうとしたみたいだが、どうやら飽きたようだ。」
「あ、何となくそんな感じはしてた。」
「挫折(?)したキャベツ(?)が破滅(?)する所までは出来たから、後は全力で叫ぶだけだ。」
「キャベツである事は間違いないから、キャベツには(?)を付けなくてもいいと思うんだが。」
「そうか。じゃあキャベ太郎(?)早く叫べ。」
「……分かったよ。」
大きく息を吸い込んで、キャベ太郎は叫ぶ。
「グチャラギャラアアアアアアアアア!!!」
「え、怖っ。何その叫び方。え、何それ。え、」
ドン引きする蕪だが、それでもキャベ太郎は叫ぶのを止めようとしない。
「ビャヂャギャアアアアアアアア!!!ギュロオオオズェオオオオオオ!!!」
すると、キャベ太郎は突然、超巨大化。そして怪獣化。あらゆる物を破壊し、あらゆる物を無に帰す最凶最悪の存在になってしまった。
「え、何その急展開。意味が分から」
そこまで言った途端、蕪は踏み潰されてこの世を去った。まるで豊作すぎた年に重機で踏み潰していくアレのように。
「ンギョオオオヅヴェアアアアアア!!」
「止めて!」
と、暴れるキャベ太郎……だった何かを制する声が一筋。キャベ太郎に僅かに残っていた人間的、いやキャベツ的な要素が彼の注意をそこに向けさせる。
「あなたは……そんなキャベツじゃないはずよ!!」
レタス子だった。
「私ね、あなたをフッたのには理由があるの。あなたはキャベツで、私はレタス。そんな2人は結婚出来ないわ。品種改良みたいになってしまうもの。子供もキャタスかレベツって、どっちも微妙だし。でも、」
品種改良の下りがこの切羽詰まった状況で必要なのかはさておき、レタス子は続ける。
「でも私、本当はキャベツだったの!ずっとレタスだと思ってたけど、レタスっぽいキャベツだったの!!俺はキャベツかレタスか見分けれるぜ、なんなら匂いだけでも見分けれらるぜって人でもギリ間違えるくらいレタスよりのキャベツだったの!!!」
どれくらいなのか全然伝わらないが、レタス子は続ける。
「だから、私……キャベツ太郎君がいいの!本当は、ずっとずっと、好きだったの!!」
その言葉を聴き、大怪獣の目から涙が落ちる。それが地面に落ちると共に、彼は元のキャベツへと戻っていた。
「キャベツ太郎君!」
元のキャベツとなって、ぐったりと横たわる彼に、レタス子は駆け寄る。
「レタス子……そうか……僕が嫌われてたんじゃ無かったんだね……」
「そう、そうよ……ごめんね、私がもっと早く知っていれば……」
2人は、抱き締め合いながら、泣きながら話した。
「ごめんね……レタス子。僕、そろそろ……行かなきゃいけないみたいだ。」
「ダメよ!せっかく……せっかくお互いの気持ちに気が付いたのに……」
「……あぁ、僕は幸せだったよ。最後の最後にこんな……レタス子……本当に……本当にありがと……」
「キャベツ太郎君ーーーー!!」
輝きが、スッと失われた。ついさっきまで居た彼は、もうこの世には居ないのだ。
「……キャベツ太郎君……」
レタス子は、キャベツをそっと、実に優しく撫でた。冷たい風が吹いていた。
ガバッ
「僕はキャベツ太郎じゃなくてキャベ太郎だからね!キャベツさん太郎により近くなっちゃうからね!!」
バタッ
「……ごめんなさい……」
叫ぶ。挫折したキャベツの破滅。 いましん @zunomashi
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