痛み

痛みというのは不思議なものだ。

感じている本人にしかわからないのに。

外傷で血が出ていれば、それを見ている人も痛むという。


けれど今の世の中、外傷を負う事は珍しい。

取りざたされるのはいつも見えない痛みだ。

頭が痛い、心が痛い。

訴える声は多種多様。

それでも、その痛みは本人以外にわかりはしない。


頭が痛いと訴える。

顔色も悪く、脂汗でも浮いていれば信じてもらえるだろう。

けれど顔色も変わらず、ただ痛みだけを感じているときに。

信じてくれる人はどれだけか。

サボりの言い訳だと、決め付ける人はどれだけか。


心が痛いと訴える。

一番、他人に見えないところ。

心が痛くて辛くて動けないといっても、身体にでなければ誰も信じてくれやしない。

不眠だったり、欝だったり。

物が食べられなくなったり、趣味を楽しめなくなったり。

そういった不調がでても、サボりだという声はなくならない。


心の不調を訴えたあと、テレビを見て笑ったら、やっぱり嘘なんだと言われてしまう。

心が痛んでいるなら、何も楽しめないはずだと決め付けられる。

そうしてがんじがらめになっていく。


痛みは人に見えないから。

訴えたところでわかりはしない。


声をあげる気力をなくせば。

痛みは誰にもわかりはしない。


そうして、ただ痛みを抱えて生きていく。

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