第121話
――ユリカ、このまま黙って帰るつもり?でもなんて言えばいい?きっと、わたしは倉田くんを好きなんだ。・・・須永さんに対する憧れとはまた違うけれども、倉田くんと一緒にいることはとっても楽しい。今までこんなにわたしを笑わせてくれる人はいなかった。それでいて、実は優しい人だ。なぜそれに気づかなかったんだろう。彼はいつもわたしを助けてくれて、元気づけてくれた。大事な時、必ず倉田くんの言葉に励まされた。ああ、もっと早く気づいていればよかった。もっと前から彼に気持ちを伝えるような言葉を言って、行動を起こせばよかった。せっかくこんなに近くで一緒に歩いているのに、ものすごく遠く感じるのはなぜ?田中さんは「なんにもわかってないのね」って言っていた。でも、ひょっとして、それこそ倉田くんがわたしのことなんか、なんとも思っていなかったら?田中さんの冗談だったら?「また会える?」なんて言えない。断られた時、わたしはまた泣いてしまうかもしれない。もうあんな思いは嫌だ。ラインでやりとり?ううん、そんなところで気持ちを伝えることなんか決してできない。何より、記録に残ってしまう。そんなのは耐えられない。どうしよう・・・どうしたらいい・・・。
パルテノン多摩の階段を一歩ずつ踏みしめながらユリカは必死に考えた。別れの時が近づいてくる。相変わらず倉田も無言だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます