第119話

 ユリカはニコニコして倉田の方を見た。すると、彼もこちらを見ながら笑っている。彼は完璧に「バッテリー」の歌詞を暗記し、あまつさえ、語尾を上げるジェームスヘットフィールド独特の歌唱法さえも表現していた。ユリカはふと、いつか川野が言っていた言葉を思い出した。


 ――好きな人ができるとさ、その人の好きなものまで好きになるんだよね。


 ユリカは、まさかね・・・と思いながら、カラオケに合わせてソロを弾き始める。しかしもし、そのつもりで倉田がメタリカを聴いてくれていたのなら、自分はとても幸せ者ではないか。今まで自分のことをそういう風に想ってくれた人はいなかった。

 曲は最後のツー・バスの連打の部分に突入し、ユリカと倉田はそろってヘッドバンギングを披露した。みんなはあまりの迫力に拳を突き上げたり、大笑いをしたり、真似をして頭を振ったりと、大いに盛り上がった。

 ダダッダッダッダダン!

 と曲が終わるやいなや歓声と拍手と口笛が一斉に部屋に鳴り響いた。

「スゴイや、ユリカちゃん!倉田くんもスゴイよ。2人ともいいコンビだね!あーあ、店長も来ればよかったのにねえ。」

 田中さんは心の底から嬉しそうである。

 倉田は調子に乗りすぎたのか、首を抑えて座り込んでしまった。それがまたみんなの笑いを誘った。

  ――倉田くん、ありがとう。今までで一番楽しく「バッテリー」が弾けたよ。

 ユリカも笑いながらそう感じていた。

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