第117話

 もしかして倉田は自分を・・・それが本当だとすれば、なんとなく、彼女は嬉しく、温かい気持ちになった。確かに、言われてみれば、思い当たるフシがないわけではない。

 いつも倉田のおかげでユリカは窮地を乗り越えてきた。何度も彼の話に笑わされた。バイトをしていた時は、常に倉田と一緒にいたので、彼がそこにいるのが当たり前になっていた。あまりに近すぎて、彼のことを意識したことはほとんどなかった。だがそれも、今日で終わりになる。今更そんなことに気付いたユリカは、なんだか取り返しのつかないことをしたような気がしてきた。

 ユリカは自分の気持ちがまだよく分からなかった。つい2ヶ月前までは須永のことしか考えていない自分であり、あれだけ大泣きしたのである。

 ――ユリカ、虫が良すぎやしないか・・・あれだけ泣いておいてさ、急に倉田くんのことなんか考え始めてさ。そんなのって倉田くんに失礼じゃない?いやいや、別にまだそうと決まった訳じゃないから。田中さんが勝手にそんなこと言ってるだけかもしれないし。でも、正直なところ、倉田くんのことは好きだ。とはいえ、須永さんの時と比べると、どうなんだろう・・・。あーそういえば川野さんが言ってたなあ。追われるより、追うほうが気持ちが高まるとか・・・いやいや、わたし何考えてるんだろう。

 1度そんな風に考え出すと、ユリカはなんだか落ち着かない。倉田の方をまっすぐに見られない。

「2次会行く人―!」

 宴会はお開きとなり、すっかり酔った田中さんがみんなに呼びかけた。店長は帰ったが、それ以外のひかり堂の店員は近くのカラオケ店に行くことになった。

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