第103話

「みんな、お疲れ様!最高のライヴができたよ!デスピノ最強。手伝ってくれたみんなもありがとう!」

 マヤはメンバーと手伝ってくれたスタッフにねぎらいの声をかけた。スタッフもまた涙を流していた。

 カーテンの向こう側では未だ興奮冷めやらぬざわめきが聞こえてくる。

「あーあー、マヤ姉、無茶するなあ、フレームゆがんでるよ。」

 赤い目をしてキイチがドラムセットを片付け始める。

「いやーユリカのあのダイヴを見たら、もうやるっきゃない!って思ってさ。ごめんね、ケガしなかった?」

 マヤはシールドをくるくると巻きながらキイチに謝った。キイチは別に気にするふうでもない。

「いや、わかるよ。まさかユリカちゃんがあんなことするなんて思わないもん。よくやったねえ。すごかったよ。」

「いえ、自分でもなんでかわかりません。本当にあの時は“飛べる”って思ったんです。」

 洟をすすりながら、ユリカはにこやかに応えた。

「それにしても最高のライヴだったね。野音よりも楽しかったよ。ひょっとしてアタシの人生、今が絶頂?」

 ソメノもリッケンをケースにしまいながら満面の笑顔だ。


 しばらくの後、客全員がようやく外に出て、講堂は再び静寂を取り戻した。

 機材を手伝いの生徒たちと外に運び出すと、外はもうすっかり暗くなっており、肌寒さを感じるほどである。ユリカたちはまだそこにたむろしていた沢山の人間から次々に声を掛けられた。

「お疲れ様!すごかったよ、ユリカ!」

「マヤさん、素敵でした。体大丈夫ですか?」

「今度いつライヴやるんですか?ツイッター見てますから、告知してください、絶対行きますから!」

「感動したっす!マジ泣けたっす!」

 そのたびにマヤたちはお礼をいった。彼らあってのライヴだった。

 アンプやドラムセットを台車に載せて軽音楽部の部室にたどりついた頃には、ようやくライヴの興奮も冷め、心地よい疲労感をユリカは感じ始めていた。

「ユリカはここに入るのは初めてだよね?」

 そういってマヤは部室の電気をつけた。

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