第104話

 軽音楽部の部室は部屋の広さは文芸部のそれと同じであったが、中身はまるで別世界だった。部屋の壁一面がマジックでの落書きや、バンドのポスターやシールで埋め尽くされていた。

 部屋の左側は年代物のジャズコーラスアンプや、どう見てもジャンクとしか思えないギターや、その他用途不明の機材で雑然としている。部屋の右側のラックには沢山のCDやレコードが詰め込まれており、掘り出し物もあるのではないかという歴史を感じさせた。正面奥にはちいさくて小奇麗なテーブルとイエロー・ブルー・グリーン・オレンジのカラフルなイームズチェアが4脚あった。

 次々と機材を運び込む生徒たちの横で、ユリカは珍しげに部屋を見回した。

 ――ここが軽音楽部の部室なんだ・・・そうか、これからは好きなだけここで練習できるんだ。もう、スタジオ代払わなくてもいいんだ、やった。すごい落書き。なんだろう、“虹のリトグラフ”って?バンド名?でも“おニャン子最高”とかも書いてあるし、あっ、ポリスとかメン・アットワークとか、キュアーとかパパの好きなバンドも書いてある。

「どう、ユリカ、ある意味素敵な空間でしょ。」

 メサ・ブギーのアンプヘッドをどっこいしょとキャビネットの上に載せながらマヤが聞いてきた。

「はい、見てて飽きません・・・このCDとかレコードもすごいコレクションですね。」

「これはね、歴代の部員たちが寄付してったんだよ。だから中には貴重なものもあるんだ。ヒマな時はよくこのへんのCDを引っ張り出して聴いてたんだよ。それでいろんなバンドも知ったなあ。ユリカは結構詳しいから、見ると面白いんじゃない?」

 そう言われてユリカはCDの背表紙を眺め始めた。

「あ、これきちんと五十音順になってるんですね。いきなりアイアンメイデンだ。アンスラックス、アークティック・モンキーズ、アンダーワールド、イースタン・ユース、あはは、UDOだ!オアシス、筋肉少女帯、ギターウルフ、コーンもあるんだ・・・ケミカルブラザースね・・・なんだか色々あって確かに面白いですね。」

「そうでしょ。何か気になるのがあれば、持って行ってダビングしなよ。アタシ、そこから初めてキング・クリムゾン聴いてブッ飛んだんだ。」

 ソメノがワクワクした様子でユリカの側へとやってきた。

「あ!ダイナソーjrの3枚目がある!」

 ユリカは突然素っ頓狂な声を上げた。

「また渋そうなの見つけたね。知ってんの?」

「はい、結構好きなんです。おうちにも何枚かあるんですけど、これだけ無くて。レンタルはもちろん無いし、かといって買うほどじゃなかったから、嬉しいです。」

 これ以上見ているとキリがなさそうなので、ユリカはまたいつでも借りられるからとCDの物色をやめて、ダイナソーjrだけを引っ張り出してショルダーバッグに入れた。

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