第85話

 ツッタカター、ツッタカター、タンタンテケツクタッタカター

 タンタンタッタカツッテンテン、タタタタタタタタタンタッター


 マヤの告知により、既に20人近くのデスピノのファンたちが集合し、かなり人目を引く集団となったその先頭で、キイチが首からぶら下げているスネアから繰り出されるリズムにのせ、ゴシックアンドロリータの漆黒の衣装を着たユリカはギターを思うままに弾きながら歩き始めた。

 ソメノがショルダーバッグのように肩から提げたマーシャルのミニアンプからはユリカが奏でるリフやアドリブソロが流れ出す。

「本日5時30分より、講堂でデスピノライヴ『千人斬り!』行いマース!ぜひご来場くださーい」

「あの燃えよドラゴンで有名なデスピノがライヴします!ドラゴンももちろん登場!」

「天才ギター少女ユリカのテクニックが間近で見られるチャンスですよー」

「メタル好きも、そうでない人も、何かが起こる『千人斬り!』ライヴお見逃しなく!」

「2―B教室のカフェ『ザ・ビューティフル・ピープル』で美味しいカプチーノをどうぞお」

「ネットで話題のデスピノが生で見られる数少ない機会ですよお」

 マヤはどこから手に入れたのか、拡声器を手に、思いつく限りの宣伝文句をユリカの後ろで煽り続ける。学内には明らかにデスピノ目当てと思われるメタルファッションの人間もちらほらと見受けられ、中には彼らに握手を求めたり、写真をねだったりする人間もいた。

 2―B教室からスタートした行進は、進むにつれ、徐々に参加する人数を増やしていった。

 ドンタカッタッタと行進が1年の教室を通過すると、ほうぼうからユリカは声をかけられた。

「わーユリカ、カッコイー!ギター上手!」

「後で絶対観に行くからね!頑張って!」

 いずれも優しさと友情に満ちた声援で、ユリカは大いに感動した。以前のユリカなら、きっとそれだけで泣きながらギターを弾いていたかもしれない。しかし様々な経験を経てユリカは成長していた。彼女は自分でもこんなに気持ちがしっかりしているのを、多少の驚きをもって感じていた。

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