第86話

 ――みんなが応援してくれて嬉しい。今のわたしはその気持ちをきちんと受け止めることができる。もう4月の、あのおどおどしたユリカじゃない。この学校に入って、みんなと出会って、わたしは自分の存在を確実に感じている。

 私はギターを弾くのが大好きだ。詩を書くのも大好きだ。本を読むのが大好きだ。でも、みんなといるのはもっと大好きだ。誰かと気持ちがつながるのは、生きている証だ。わたしは今、世界一幸せかもしれない。マヤさんたちと目標に向かって頑張って達成しようとしている。それをみんなが応援してくれる。

 野音のことは残念だったけど、あれだって素晴らしい経験だった。この歳でこんなに色々なことを体験できたわたしは本当に恵まれている。そして、この道を歩んできたのは、他ならぬわたしだ。わたしの意志で歩いてきたんだ。今、わたしは様々な人のおかげで自信を手に入れた。きっとこれから先、どんなことが起きても大丈夫だ。やっていける。


 ユリカがこんなふうにあれこれと思いながら先頭きって歩いていると、集団は様々な露店が集まっている中央広場に到着した。

この場所は一番学内でにぎわっている場所であり、学園の生徒だけではなく、各方面から集まった高校生や中学生たちでごった返していた。カレーのにおいや、チョコレートのような甘い香り、人々のざわめきと高揚、そんなものが混沌としている。そして、その中をユリカはギターを武器にジャンヌ・ダルクの気分でゆっくりと突き進む。

「あ、デスピノだ!なんかスゲー」

「うわー大人気じゃん」

「がんばって!マヤさん、ソメノさん!」

 ここでも様々に声を掛けられた。中には綿アメやら、たこ焼きやらを差し入れてくれる人もいた。ユリカはソメノが差し出す綿アメをほおばりながらギターを弾いた。

 すでに集団は百人近くに増え、ふと後ろを振り返ったユリカは、その人数に驚き、まるで自分がハーメルンの笛吹男のような気がしてきた。

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