第78話
「ジャーン!」
横井の予想は的中し、サテンのペラペラのマントとフェルトでできた山高帽をかぶり、一見してインチキマジシャンにしか見えない格好で大沢は登場した。
そのあまりに貧相な見た目と、“ジャーン”でみな爆笑した。
「なんだよー、せっかくカッコよく登場したのに、そんなに笑う?」
予想と違った反応に大沢はやや落胆した様子である。理想と現実がうまくマッチしない場合の、典型的な例がここにあった。
「いやーあんまり安っぽくて、ゴスロリに失礼だろ。え?俺の分もあるの?ヤだよ、お前と同じ印象とか!」
全力で拒否する山賀の様子がおかしくて再び女子3人は大笑いした。
「ね、私あんなんじゃなくて本物が着たい!美山さん!」
横井が待ちきれない様子で言った。
「はーい、じゃ、大石さんも一緒に着替えよう。女子更衣室、空いてるかな?」
美山は今朝カフェグッズと同時に持ち込んだ大きめのキャリーバッグを引き出した。
「じゃ、着替えてきマース。」
そう言って3人は女子更衣室に向かおうとすると、ちょうど学祭実行委員の集まりに出ていた須永と池田が戻ってきた。
「おぉー、いい香りがするね。さすが本格的エスプレッソマシン!俺も飲みたいな。池田君も飲もうよ。あれ、大沢、何その格好?マジックショーでもやるの?」
そう言いながら須永はなんの造作もなく、カフェポッドをマシンに入れ、手慣れた様子でコーヒーを淹れ始めた。
「須永さん、それやり方わかるんですか?」
マジシャン大沢が目を丸くして聞いた。
「うん?まーね。うわーうまそう。これが、高校の学祭で飲めるなんてすごくないか?」
ユリカもふと大沢と同じ疑問を持ったが、
「ユリカちゃん、行くよー。」
という横井の誘いですぐに取り紛れた。
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