第74話
廊下の方からどやどやと人が戻ってくる気配がした。表彰式が済み、コンテストが終了したのだ。
数十人の高校生が戻ってきた控え室はにわかに騒がしくなった。小さなトロフィーを持っている女子高生や、泣いている男子高生もいた。彼らにとってデスピノはもはや眼中になく、全員がコンテストの余韻に包まれていた。
最後にバナナフィッシュの面々が戻ってきた。自然と彼らは拍手で迎えられた。ユリカたちも惜しみない拍手を送った。
大きなトロフィーを抱えたトランペットの少年が拍手の中、ユリカたちに近づいてきた。
「あのー、残念だったよね。すごかったよ、デスピノの演奏。俺らマジで負けたかも、って思ったもんね。だからなんか悪い気もするんだよね。良かったら一緒に写真撮ってくんない?そんで、ツイッターとかに載せてもいい?」
満面の笑顔でそう彼は話かけてきた。勝者の余裕だろうか。しかし、もとより断る理由もない。デスピノたちと黒焦げのドラゴンはバナナフィッシュと一緒に写真に収まった。そしてそれをきっかけに出演バンド全員の撮影大会となった。
「デスピノホントすごかったっす!俺メタルに目覚めましたよ!」
「学祭に絶対行きますから、頑張ってください!」
「こんど良かったら対バンしましょう。」
ユリカたちは様々に賞賛を受けた。彼らは皆デスピノと写真を撮り、それぞれが思い思いにツイートしたり、SNSに流したりした。
ユリカは倉田から結果を心配するメールが届いているのに気がつき、すぐに返信した。
“心配してくれてありがとう。アクシデントがあって、優勝できなかったよ。でも、そのおかげでデスピノ有名になったよ。ツイッターを見てね。”
870だったデスピノのツイッターのフォロワーは、この日を境に1万を超えた。
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