夏休み前だけど、気分はモヤモヤ。
遂に、夏休みが目前に迫ってきた。
大量の課題、課題、課題……。
「ひでーな、先生達もよくもまあこんなに問題集められたよな、」
机の上に今日配布された全ての課題でタワーを作り、卓人は溜息をついた。
「計画的にやれば平気なんだろうけど、そうもいかないのが現実だからね……。これは今年も徹夜コース決定だね」
「心優、それ言わないで……」
今度は佑が耳を塞いで俯いた。
「ねぇ、そしたらさ、週一でみんなで勉強会しようよ」
突然、咲っぺがそう提案した。
「「「「え?」」」」
「さ、咲っぺ……」
「お前……」
「「「「天才かっ‼︎」」」」
「おほほほほ……! 咲姉様とお呼び」
「なんやそれ!」
「なんだよ、文句あるの? 合川!」
「なんでもありませんごめんなさいさきねえさま」
「よろしい」
修学旅行が終わってから、私も含め、周りの人間関係が少しずつ変化していたが、合川君と咲っぺの仲は相変わらずだ。
いや、合川君からは確実に矢印が出ているけど……咲っぺが毒舌という名の盾で全て弾いてるのか?
「ま、今日は授業5分短縮だから、とっとと帰って一問でも解かなきゃな。早く終わらせてみんなで遊びに行こうぜ!」
快斗が親指を立てて笑いかけると、卓人に背中を叩かれながら褒めちぎられていた。
確かに、珍しく彼は課題に対して「ちゃんとやってやろう感」がある。
「ま、部活あるけどな!」
「望先輩に教えてもらいところだけど、そうもいかないのが我らバスケ部……」
「サッカー部はすみ兄と洸夜先輩がいるから、なんとかなる」
「陸上部には、咲が居るから平気やな!」
「は? なんでそうなるの⁉︎」
「まあ、まあ、咲っぺ、今度みんなで勉強会するんだからさ、大目に見てあげなよ、ね?」
***
いつも通り、「おたく」のメンバーで電車が来るのを待っていると、望先輩がこちらに向かってくるのが見えた。
「お、今日は全員お揃い?」
「はい」
咲は頷き、心優の方へと視線を向けた。
「心優ちゃん、調子はどう? 大丈夫?」
「大丈夫ですよ。もう、先輩、それ聞くの何回目ですか……」
「だって本当に心配だったから、」
「いやいや……心配しすぎです」
「調子が良いなら、丁度良いや。今度のバスケの試合、来ない? 勿論、特等席!」
「良いんですか? また特等席……」
「うん。良いよ。心優ちゃん達なら大歓迎だから」
「じゃあ、またみんなで応援しに行きますね。……快斗、」
「ふぁっ⁉︎」
不意に名前を呼ばれたので、変な反応をしてしまった。
「驚きすぎ。今度の試合、観に行くね」
「……おう!」
精一杯笑ってみせると、彼女は負けじと笑い返した。
俺の考え過ぎだった。告白してから、なんとなく距離が出来た気がしたけど、彼女の笑顔は変わらない。
「快斗、良いのか?」
突然、耳元で卓人の声がした。
「ぅわっ⁉︎ な、なにが⁉︎」
「……望先輩と心優」
「……だったら、何をすれば良いんだよ」
「俺らさ、先輩の恋に協力するって言ってたけど、今となってはもう別問題だからな?」
「だから……何?」
彼は、俺の言葉を聞くと、あーもうっ! と焦ったそうに頭を掻いて言った。
「もっとガッツいて行けってコト!」
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