春休み最終日、爆弾発言。
昨日までの2日間、引っ越しの作業ばかりでじっくりと話す機会が無かった。おかげさまで、私達の
しかし! 今日、その日がやって来た。
「やっと終わった〜‼︎」
「おつかれ〜」
歩は読んでいた雑誌から顔を上げ、彼に向かって微笑んだ。いつの間に仲良くなったのだろうか。
「お昼ご飯、今出来たよ」
咲っぺはキッチンから顔を覗かせ、私達に食事の準備を促した。
「あれ、まっさんは?」
「あれ、快斗、言わなかったっけ?今日まっさん、買い物に行くとか言って朝早くに出てったんだよ」
「何買いに行ったんだろ」
歩と
「今、例の事言う?」
「今しかない!」
「じゃあ、さりげなく会話をそっちに持っていこう」
「ラジャー」
2人は頷き、食器や食材をテーブルに運んだ。
「「「「いただきまーす」」」」
私たちは、一斉に箸を手に取り、料理を口に運んだ。
「……そういえばさ、皆は何か好きなものとかあるの?」
あ。咲っぺが言う前に
「俺は、文房具好きなんだ。後で俺の部屋来ていいよ。文房具めっちゃ有るから」
歩はサラッと流れるように言った。
「わ、私は、鳥が好きなんだ〜」
うあぁぁ〜。わざとらしさ満載だ……。我ながら、自身の演技力に呆れる。
「私はね……」
咲っぺが箸を置きながら口を開いた。あ、遂に言うのね。言ってしまうのね……。咲っぺ〜‼︎
咲っぺは深呼吸し、右手の人差し指を立て、サッと挙げた。
「私は二次元が好きっ‼︎」
咲っぺの目はキラキラと光り輝いている。私と歩は、心の中で手を合わせてから、
ごめんっ‼︎ 咲っぺ‼︎ やっぱ隠しておいた方が良かった……! ごめん‼︎
「か……快斗は?」
と歩は彼の気を逸らそうと試みた。
「あぁ、俺? 俺は、バスケが好き。あ、運動全般?」
うわあ……。運動オンチの私にとっては全く理解不能な世界観……。羨ましいくらい……。
「え⁉︎ 八生って運動苦手なの⁉︎」
ん……? なんで
「心優、声に出てたよ」
と隣に座った咲っぺが耳元で囁いた。
「え⁉︎ あ、声に……出て……た……?」
「うん。八生って、意外とおもしれーなー」
「今度、体育で苦手なトコあったら教えてやるよ。その代わり、勉強教えてな」
「え、あ……。ありがとう、」
「よしっ‼︎ 私もう片付け始めるから、食器持って来て!」
咲っぺは私の動揺っぷりを見て、話題を強引に替えた。
私は食器を持って行くついでに彼女の耳元で礼を言うと、彼女は耳まで赤くして、Your welcome! と発音良く言って笑って見せた。
私は、入浴までの間、フクロウのステッカーに
私は、ネット上で話題となっている小説家でもある。その名は『OWL』
フォロワー数は今尚増え続けている。
掲示板にアクセスし、読者からのメッセージを読むのがこの時間の日課。
『OWLさんの小説、最高‼︎』
『OWLワールドに引き込まれる(*^^*)』
等など。
「ふふふ……」と気味の悪い笑みが零れる。しかし、これは自分でも止められない。だって、嬉しすぎるから。
しかし、次のメッセージを読み、笑みが消えた。
『OWLさんの恋愛小説読みたい(´-`)』
『OWLさん恋愛系書いて‼︎』
うわあ……うわわわわわ……。無理だよ。マジで無理。恋愛経験0だから書けねーよ。ゴメンなさい。ホントにゴメンなさい……。
「何がゴメンなの?」
「○*€〒▲〆×♧‼︎‼︎」
「……え?」
言葉ではないものを叫び、慌ててPCを閉じ、ヒーヒー言っている私を見て唖然としている声の主は
「……何か、イケナイ事を聞いちゃった?だとしたら、ごめん……」
「いや……いい……良いのだよ……。で、何か用ですか?」
「あぁ、あのさ……明日、一緒に学校行かない? 俺、ココから駅までの道わかんないし、歩も咲も朝練あって一緒に行けないらしいから……。ね? お願いっ‼︎」
イッショニガッコウニイク……? 何語? あ、日本語だ。え? 一緒ニ学校ニ行ク……一緒に学校に行く⁉︎ は? え? 何を言って……。
顔を上げると、首を傾げ、捨てられた仔犬のような目で私を見つめる
「……ダメ?」
「う、うわあ、わはは……」
この状況からして、
「わ、わかった……。その代り、寝坊しないでよ」
「ありがとうっ‼︎」
その時、私は知らなかった。
まさかあんな事が起きるとは……。
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