第26話

マキとクニさんは多国籍料理屋のアルバイト仲間だった。はじめはシフトが重なれば話す程度の関係で互いに恋愛感情はおろか、興味すらなかった。

それぞれ仕事も趣味も充実していたし、マキはそれなりに遊ぶ相手にも困っていなかった。

そしてなにより、クニさんは恋をしていた。

店の常連さんだ。

ショートカットの似合う、色白で透き通る肌。細身ながら、アクティブで健康的な女性だった。キレイな顔立ちなのに豪快に笑う彼女は男女問わず人気があり、常連の中でもマドンナ的存在だった。どちらかといえば内気でシャイなクニさんにとって、そんな彼女は眩しく、羨ましく、美しい女神に見えていた。僕のような者が女神様となんて、恋は愚か話すことなんて出来るわけがない。そうやってもじもじしている気持ちは周りの人間にバレていた。クニさんは嘘がつけない男なのだ。

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