第16話
騒ぎを見つけたクニさんがすぐにマキを呼んだ。マキは店の二階にある自宅スペースにナナミを連れて行き、ソファに寝かせた。
「よく泣いたわね。疲れたでしょ?少し眠りなさい。」
ナナミに毛布を掛けながらマキが言った。
「ゴメンなさい。開店前におしかけて。マキちゃん今日、お休みだったでしょ?」
毛布に顔をうずめながらナナミが謝った。目も鼻も真っ赤になった顔を恥ずかしくてあまり見せたくなかった。
「いいのよ?気にしないでちょうだい?それより、このアロマ、心も体も安らぐの!焚いておくからゆっくりしてね。」
マキは自慢げにオイルのビンをみせると、洒落たアロマポットにオイルを注いだ。
ゆっくりと優しい香りが漂いはじめた。ナナミは少しずつウトウトし始め、眠りについた。香りに包まれると安心して眠れた。
「ナナちゃん、寝たわ」
マキが店に降りてきた。
「ありがとう。」
「ありがとね。」
クニさんとアイカが礼をのべた。
「わたし?なにもしてないわ。ただ、自慢のアロマを焚いてあげたわ!結構高いやつ!」
マキが力強くいうと、2人は吹き出して笑った。
「こういう時はやっぱアンタが適役ね!」
アイカが笑いながらカウンターに座るマキにコーヒーを差し出した。
「さすが、僕の奥さんでしょ?」
クニさんが嬉しそうに言い、ムジカのモーニングセット「エッグベネティクトグリーンサラダ添え」をマキの前に出した。
「笑いながらってのが気になるけど、お褒めの言葉とこの美味しそうな朝ごはんはありがたくいただきます!」
3人は笑いながら朝食をはじめた。
ナナミは夜勤の疲れも助けて、昼過ぎまでぐっすりと眠った。
ナナミが目を覚まし、店に降りて来ると、ランチタイムが終わりかけていた。ナナミに気がついたクニさんに手招きされ、カウンターに座ると、レモネードを作ってくれた。レモンの酸っぱさが体に染みた。
「さ、これ食べて、体力もつけてね!」
クニさんがポークソテーと大盛りのライスを出してくれた。
「ありがとうございます。ずっとご飯食べ損なってて、すごくお腹空いていたんです。」
「よく泣いて、よく寝たもんね。体力使うよ。」
「はい。」
ナナミはうつむいた。
「体力付けたら、ちゃんとユウトくんと向き合わなきゃだね?」
申し訳なさそうなナナミの頭をポンと叩くと
「どうぞ、召し上がれ!」
クニさんが笑った。それを合図にナナミはガツガツと食べ始めた。
そうだ、もう話合わなければ。ナナミは自分に言い聞かせながら次々とポークソテーを平らげた
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