第11話

翌日から気合を入れ直し、ナナミはメキメキと今まで以上に働いた。とにかく嫌なことは考えたくなくて、がむしゃらになった。相変わらずユウトをモデルに幸子は絵を描き続けていたが、気丈に振舞った。

いつもどおり過ごさなければ、今まで隠してきた自分とユウトの関係性も明るみになってしまう。それだけは避けたかったのだ。


そんな日が数日続いた頃、ユウトからデートや食事の誘いが頻繁になった。ナナミは我慢したかいがあった・・・。ユウトを信じて良かったと喜んだ。

「最近、すごく誘ってくれるけど、なんで?」

ナナミは一緒に近くのイタリアンへ食事に出かけたユウトに尋ねた。

「あ、ごめん、誘いすぎ?無理させちゃってた?」

ユウトは申し訳なさそうにナナミを伺った。

「ううん!全然!むしろ嬉しいくらいだよ。ただ、めずらしいなーって。」

「最近、立て込んでた課題が終わって、かなり仕事が落ち着いたんだよ。で、もうすぐまた新しい課題が始まるんだけど、それまでは貴重な時間だし、ね。」

「そっか!じゃあそれまでは存分に甘えさせてもらうわ!普段の分まで!」

ナナミは嬉しそうにワインを飲み干した。

「ただ、飲みすぎはやめてくれよ?お前飲み過ぎると動けなくなるんだから。」

ユウトは苦笑すると空いたナナミのボトルにワインを注いだ。

「そういえば、田中さんの絵、どうなの?」

ナナミがユウトに尋ねた。

「えっ!?」

ガシャン・・・!!!

ユウトは聞き返した拍子にワインを注いでいたナナミのグラスを倒してしまった。

「わぁッ!!」

「ご、ごめんっ!!ナナミ、ワインかかってないか!?」

ユウトが慌ててナプキンでワインを拭き取りながら尋ねた。

「うん、大丈夫。ユウトは?」

「俺は大丈夫。ホントごめんな!」

「平気だよ!新しいのたのもう!」

騒ぎに駆けつけた店員に片付けと新しいワインを頼むと二人は再び食事を続けた。

ナナミは質問したこと自体を忘れ、違う話を始めた。ユウトが少し元気がなかったが、ワインをこぼしたせいだろうと気に留めることもなかった。

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