第4話

アイカは会計を済ませたカップルと玄関先で話しこんでいた。

「はい、2杯目。」

アイカ達をぼーっと見ていると、目の前にミントの葉が添えられたレモネードが現れた。

「ありがとう、クニさん!キレーだねぇ、このミント。」

知らぬ間にカウンターから出てきたマスターからグラスを受け取ると、しげしげと見つめた。

「飲むと、カラダもキレイになる気がするってマキが言うよ。」

マスターはニコニコと嬉しそうに告げた。ナナミは頷いた。

「マキチャン言いそうだわねー。で、その可愛くてしょうがない奥様はいつ来るの?」

「レッスンが4時までだから、そろそろ帰ってくる頃だよ。ほら。」

そう言いながら窓の外を見るマスターにつられ外を見ると、一台の鮮やかなオレンジ色の車が、田んぼ道をこちらに向かって走っていた。

ここ、カフェ「ムジカ」はナナミの友人マキの夫、クニさんが経営する小さなお店だ。そこで同じくナナミの友人のアイカが働いている。マキは自分はカフェでの仕事に向いていないと、趣味でやっていたベリーダンスのインストラクターとしてひと山向こうの市街地で教室を営んでいる。

「遅くなってゴメン。ナナチャンいらっしゃい。」

マキが荷物を抱え店に入ってきた。カラフルな色使いのアジアンなワンピースをまとい、鮮やかな水色のストールをヘアバンドのように頭に巻いた姿は異国情緒あふれる出で立ちだ。

「おかえり。」

クニさんはマキから荷物を受け取った。

「ありがとう、クニさん」

マキが礼をいうとクニさんはうれしそうに店のバックヤードへと荷物を運んでいった。

「ナナチャン、今日は明け?」

マキがナナミの席の向かいへ腰かけた。

「うん。だから目覚めのレモネード!クニさんが作ってくれたよ。」

ナナミがグラスをマキに差し出した。

「んー!おいし。これ、カラダがきれいになる気がするから好きなのよ。」

マキはナナミからグラスを受け取り一口飲んで笑った。ナナミはニコニコしながら

「知ってる。クニさんがゆってたよ?」

とクニさんを見やると、親指をあげたクニさんがカウンターで頷いた。

「あら?そうなの?あたしって居なくても話題なのね??アイドルはこれだから困っちゃうわ。」

マキは額に手をあてオーバーに背もたれに倒れこんだ。クニさんとナナミは「さすがマキチャン」と笑った。


「ダンナにポーターやらせといて、誰がアイドルですって?全く、ウチのマスターをこき使わないでくれるかしら?奥様?」

駐車場で客を見送り、戻ったアイカが二人のテーブルに料理を運びながらマキに毒づいた。マキは膨れ面で料理を受け取る。テーブルにはいくつかの料理が所せましと並んだ。

「じゃ、御三方。ごゆっくり。」

クニさんがエプロンを外しながら、カウンターを出た。

「ありがとう、クニさん。」

マキとナナミが礼を告げた。

「仕込みと片づけ、しっかりやっておきますから!お疲れ様です。」

アイカは店を出るクニさんにお辞儀をした。

「さ、食べるわよー!お腹すいちゃった」

マキがうながすと、アイカがエプロンを外し席へついた。三人がテーブルを囲み、グラスを掲げた。

「一か月に1度の会よ?たーんと食べて、しゃべるわよ!」

『乾杯!』

マキの合図で三人は乾杯した。


店のドアには『本日、貸切』の札が掛っていた。

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