家族。故郷。大切な繋がりについて、じわじわと考えさせてくれる。

読んだ後、次第に様々な思いが湧いてくる。そんな深みのある作品です。

母娘という関係は、特別な安らかさを持ったものである気がします。お互い気を使わず、でもお互いへの優しさは決して絶やさず…そんな柔らかな感情のやりとりが、華やかな街の描写とともに瑞々しく描かれます。
そして、離れて暮らす父への思い。自分の思い通りの生き方を選んだ父に寄り添いたい思いと、その一方で、生まれ育った場所への深い愛情を切り捨てられない矛盾。

家族。故郷。人の心を大きく占める大切な繋がりを淡々と描きつつ、その繋がりの意味をじわじわと考えさせてくれる。そんな作品です。