プロローグ2 女の死
死んだら楽になるのかな?
私は毎日自分自身に問いかける。しかし、考えても答えは出ない。そんな事分かっている。誰も死後の世界なんて知らないのだから……。
私が毎日このような自問自答を繰り返すようになったのには、理由がある。今からその理由を語ろうと思う。同情してもらおうなんて思ってはいない。私はただ、これを聞いて今後の人生の糧にしてもらいたいだけ。聞いていてもいい気分にはならないよ。だけど、同じ過ちを犯さないために聞いてくれる?
~ 一人の女の最後の話を ~
私の学校生活は結構充実していたと思う。小学校に入学した頃からあの日まではかなり、いや最上位のカーストに属していたから。
しかし、私のリアルに充実した生活は、とある男子に告白されたことが原因で悪い方向に変化していった。
私は勉強も運動もでき、みんなからは容姿端麗と言われ、はっきりいってモテるタイプの女子だった。その立ち位置は中学、そして高校入学まで変わることはなかった。だから、告白もかなりされる。あの日もそんな告白された日だった。
私はいつも通り呼び出された場所へ向かった。匿名で呼び出されたためだれかは分からない。その場についてみると、予想外の人物がいた。あろうことか、その男子はカーストの中でも最底辺にいる人だった。女子の間でも気持ち悪いといわれている人だ。でも、私はその場で断らず保留にしておいた。理由はそっちのほうが面白そうだったからだ。
その後、私は友達たちが集まっている場所へ行った。彼女らに今日の告白のことを言うと、みんな爆笑した。そして、その内にいた親友に付き合ってみたらどうかと提案された。もちろん付き合うために保留にしたんじゃない、とも言った。彼女はじゃあと他の提案を始めた。他の人に誤解が生じないよう、罰ゲームということにしたらどうかと。それにはみんな賛成だった。私もそれは面白そうだと思い、その次の日に返事をして付き合うことにした。
……これが地獄の始まりだとも知らずに……。
返事をした次の日、教室に着くとみんながざわざわとし始め、私を見ていた。もう私が付き合い始めた事を知ったのかと思った。でも、あの男子も皆に言ってるわけがない。なんたってカースト最底辺の男子なのだから。罰ゲームということにするのも約束したことだ。何でざわざわされているのだろう。私はトイレへ行き鏡を見た。特におかしなところはない。
教室に戻ると、一人の女子が席を立った。名前順が近いので、移動授業の際に同じ机で勉強し、ほんの少し話す程度の関わりだ。その女子は、私に恐る恐る話しかけてきた。あの男子と付き合っていることを知っていた。しかし、罰ゲームとしてということは伝えられていないようだった。嫌な予感は的中し、親友に問い詰めるが、そんなことがあったかと惚けられた。
その次の日から毎日、私は親友だった女子を中心にクラス、いや学年全体からいじめられるようになった。私と付き合うことになった男子もいじめを受けているようだ。私に嫉妬していた女子や私が告白を拒否した男子が、私を罵倒してくる。いや、最初はまだよかったのだ。罵倒で済んでいたのだから。日が経つにつれて、罵倒は暴力に替わり、それはエスカレートしていった。私の服には少し切れている部分があり、その服の下にはたくさんの傷やあざができた。
ここまで耐えた私はすごかったと思う。これでも毎日学校に通っていたのだから。でも、私は高校生になって最初の夏休みを境に学校に行くことをやめ、引きこもりになった。親は最初は声を掛けたものの、反応がないのがわかると、声すら掛けなくなった。
あれから自分で勉強し、大学には行け、就職はできた。それでも、あれから
十五年たった今でも、あの頃受けた傷は心にも体にも残っている。
今日は私にとって特別な日、十一月八日、私の三十回目の誕生日である。今日を機に私は自由になろう!楽になろう!
その日、一人の女の人生の幕が閉じた。
まほーつかいのすくーるらいふ 武蔵隊 @musashitai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。まほーつかいのすくーるらいふの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます