まほーつかいのすくーるらいふ

武蔵隊

プロローグ1 男の死

 死にたい……。

 今で何度こんなことを思っただろう。両手両足の指の本数で数えようものなら、何人必要なのだろう。

 この言葉だけを聞けば、精神に異常をきたしている人間であると思われても仕方がない。しかし、これは僕にとっては、日常で永続的に感じていることに相違ない。普通の人にこの感情を理解してもらうには、僕について知ってもらう必要がある。聞いていても面白くないしよい気分はしないかもしれない。でも聞いてほしい。

 ~ 一人の男の最後の話を。 ~


 小学生の時の僕はとても普通だった。みんなの輪に入り、流行りものに敏感で、自己なんてなかったけど、それでも人生の中で最も充実していた頃だったと思う。

 高学年になり、早めの成長期入ると僕はどんどん成長した。主に横に……。

 その頃になるとグループというものが出来てきた。後にスクールカーストと呼ばれるものだ。明るめのグループと暗めのグループの二つがメインだった。

 中学生になると、カーストははっきりしてきた。

 その頃はデ……、ふくよかな体だった僕は、もちろん最底辺のカーストに身をおいていた。でも、この頃はまだいじめを受けることも見ることもなかった。

 高校生になるといじめを受けるようになった。原因は自分自身にあった。いや、原因となるものを自分で持ってしまった。

 自分はとある女子に告白をした。答えは自分にとって嬉しいものだった。自信が完全になかったわけではないけど、その返事を聞いたときは少し驚いてしまった。

 それが広がり、自分はいじめを受けるようになった。

 内容は思い出しただけでも嫌になるほど、残酷なもので、明記出来ない。ただ、自殺してもおかしくはないレベルだったとも思う。

 僕はそんな自分が情けなくて、親にも教師にも言うことは出来なかった。

 高校に入学して初めての夏休み、それを境に僕は学校に行くのをやめた。

 せっかく付き合えた彼女と会えないことを考えても、いじめのことを考えるとどうしても学校には行けなかった。

 学校に行かなくなった僕を汚物としてしか見ていないような親の様子に、恐怖で寒気が全身に走った。


 それから十五年たった現在、コンビニに買い物へ行くこと以外は外出しない僕はもちろんニートなのにあの頃よりもかなり痩せていた。ストレスがないからだろうか。

 さて今日は十一月八日、僕の誕生日だ。三十歳の誕生日、忌々しい「まほーつかい」の称号を得た日だ。

 さあ、自由になろう……、楽になりたい……。


 その日、一人の男の人生の幕が閉じた。

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